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地域のDX--5G展開でもたらす生活や産業への変化

Daphne Leprince-Ringuet (ZDNet.com) 翻訳校正: 川村インターナショナル

2021-11-01 07:30

農村部には、未だに4G電波を受信しにくい場所もあるが、モダナイゼーションの手段を提供すれば、経済に非常に大きな価値をもたらす可能性がある。提供:Joe Sohm / Visions of America / Getty Images
農村部には、未だに4G電波を受信しにくい場所もあるが、モダナイゼーションの手段を提供すれば、経済に非常に大きな価値をもたらす可能性がある。
提供:Joe Sohm / Visions of America / Getty Images

 イングランドの南海岸にあるパーベック半島には、印象的な崖、湿地帯、藁葺き屋根の宿がある。次世代のモバイル接続サービスを利用できるとは思えないような場所だ。イングランドのドーセット州でひときわ閑散とした地域だが、住民はこの数カ月で初めて公共の5Gネットワークに接続できるようになった。

 Vodafoneが構築したこのネットワークは、「5G RuralDorset」プロジェクトの一環として展開されたものだ。同プロジェクトは、これまでネットワークプロバイダーに無視されてきた地域で5Gが解き放つ可能性を探るために立ち上げられた。

 以前のパーベック半島は、4G接続を一切利用できない「ノットスポット」として知られていたため、5G速度の到来は、控えめに言ってもちょっとした衝撃だった。

 このネットワークは、2022年に同地域の「Camp Bestival」イベントでの利用が見込まれており、たとえば祭りの参加者に良質な接続を提供するだけでなく、全く新しい拡張現実(AR)体験や仮想現実(VR)体験をプログラムに加えることも期待されている。

 このネットワークは固定無線アクセス(FWA)にも利用されていて、5Gを使用して高速の家庭用ブロードバンドを住民に提供している。固定ファイバー回線の場合は一般的に、インフラストラクチャーの展開や道路工事が必要になるため、遠隔地への提供が非常に難しいが、FWAではそうした作業が必要ない。

 ドーセット州議会で「Rural Connected Communities Project」のプロジェクトマネージャーを務めるColin Wood氏は、5Gが実現する前例のない速度により、同地域ですでに新たな機会が創出されている、と説明した。

 ユースケースの1つは家庭生活の支援だ。支援を必要とする人の家の隅々にコネクテッドIoTセンサーを設置し、予期せぬ事態が発生した際に緊急サービスに通報する。これは適切な接続サービスを利用できなければ実現しなかっただろう。Wood氏は、生活を補助するデバイスがあることで、住民がより長い間、自宅で暮らせるようになる、と述べた。それによって住民の快適さが増すとともに、社会的介護に関連するコストの削減も可能になる。

 さらに全般的な話をすると、地域に信頼できるネットワークがあることは、ドーセット州農村部の成功に極めて重要だ、とWood氏は述べた。「ここからビジネスを運営でき、ここで在宅勤務ができ、必要な医療サービスを都市部に出向かなくても受けられるようになるなら、われわれはこの取り組みを成功させる必要がある」。Wood氏は米ZDNetにこう語った。

 英国のデジタルデバイドは依然として根深い現実の問題だ。先頃発表されたレポートによると、英国の最大9%が今もノットスポットであり、スコットランドではその割合が20%に跳ね上がるという。

 英国には、30Mbps以上の速度を出せる「超高速」ブロードバンドにアクセスできない建物が160万軒ある。当然ながら、そのほとんどは遠隔地の建物だ。都市部の施設の97%は超高速ブロードバンドにアクセスできるが、農村部ではその数字が80%まで低下する。

 これは英国だけの問題ではない。たとえば、米国では農村部の住民の大多数(83%)が下り25Mbps以上の速度でインターネットを利用できるとの統計があるが、それでも膨大な数の市民がまともな接続環境を利用できていない。

 過去2年間で、こうした格差がさらに深刻に感じられるようになった。COVID-19のパンデミックによる全国的なロックダウンで、仕事や教育、医療のすべてが突然オンラインに切り替わったため、信頼性の低い接続環境で不便な思いをしていた人々がさらに取り残されることになった。

 そのため、各国政府は提供が難しい地域への高速接続の展開に力を入れており、5Gはそれらの目標を達成するための潜在的な解決策として宣伝されてきた。英政府は、サービスが行き届いていない地域への次世代接続環境の提供に50億ポンド(70億ドル)を投じることを約束しており、その一部では5Gネットワークが利用される見込みだ。米国では、米連邦通信委員会(FCC)が「5G Fund for Rural America」を設立した。90億ドルの予算が付いたこのプロジェクトでは、米国内の都市部から遠く離れたコミュニティーに5Gブロードバンドサービスを提供する。

 これは直観に反する取り組みに思えるかもしれない。5Gの驚異的な性能は多くの場合、ミリ波(mmWave)と呼ばれる高周波数帯の新しいタイプの信号を使用することに関連している。ミリ波の信号は高スループット、低遅延という特徴があるが、電波の届く範囲が非常に狭く、到達距離が短い。したがって、人々が遠く離れて暮らす広大な農村部よりも、人口密度の高い都市部に適している。

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