Mercedes-AMG Petronas Formula Oneチームは、歴代のF1チームと比べても圧倒的な強さを誇るチームの1つだ。2014年以降、コンストラクターズ選手権で7連覇しており、そのうち6回では、これまで7回ドライバーズチャンピオンに輝いた経験を持ち、史上最高のF1ドライバーとも言われる同チームのLewis Hamilton選手がドライバーズ選手権を獲得している。
Mercedes-AMGは、レースウィークエンドを迎えるたびにほかの9つのチームから挑戦を受けているが、チームが備えなければならない敵はほかにも数多くいる。注目度が高く、ハイテクを駆使するF1は、あらゆる種類のサイバー犯罪者や高度な技術を持つハッカーに魅力的なターゲットとして付け狙われているからだ。
Mercedes-AMG Petronas Formula OneチームのITディレクターを務めるMichael Taylor氏は、「この組織の知名度、スポーツの人気、そしてここ数年チームが大きな成功を上げてきたことが、この種の活動の標的とされる理由になっている」と話す。
F1チームが直面するサイバー脅威の多くは、ユーザー名やパスワードをはじめとする秘密情報を盗もうとするフィッシング攻撃や、絶え間なく襲ってくるランサムウェアなど、世界中の組織にとっても身近なものばかりだ。ただし1シーズンに22ものレースに参戦するという多忙なスケジュールをこなさなければならないF1では、ある週にスタッフが3カ国に分散していることも多いため、リモートで働くスタッフの安全性を守らなければならないという課題もある。
それに加え、チームの好成績の秘密に関心を持っている、高度な技術を持つ攻撃者からも狙われている。
Mercedes-AMGのサイバーセキュリティパートナーであり、同チームのネットワークを保護する技術や、進化し続けるサイバー脅威の性質に関する情報を提供しているCrowdStrikeの最高経営責任者(CEO)George Kurtz氏は、「このハイブリッドな世界では、F1から大量の最新技術が生まれている。これらの技術は、私たちが運転している車にも影響を与えており、国家の指示を受けた脅威アクターから狙われる可能性もあるため、もちろん保護しなければならない」と話す。
これには、レースウィークエンドに先駆けて作成される資料も含まれている。この資料は、チームのメンバーが次のサーキットがある国で直面する可能性があるサイバー脅威と、それらの脅威から身を守るための方法を、CrowdStrikeのセキュリティアナリストが詳しく説明したものだ。
「この資料は常に驚くべきもので、いつでもいくつかの不都合な真実や疑問を浮き上がらせる」とTaylor氏は言う。
これらの脅威からF1チームを守るのに十分なサイバーセキュリティ対策を整えるには、まずはエンドポイント、つまりスタッフが日常的に使っているノートPCやタブレットなどのデバイスの安全を確保しなければならない。