オンライン検索市場でのGoogleの優位性が競争と消費者に悪影響を及ぼしているとの調査結果を受けて、オーストラリア競争消費者委員会(ACCC)は同社に対し、専用の検索エンジン「選択画面」を実装するよう改めて要請した。
選択画面は、あらかじめ設定されたデフォルトの検索エンジンに消費者を誘導するのではなく、使用可能な複数の検索エンジンを消費者に提示するセットアップページだ。
ACCCの会長を務めるRod Sims氏は、「選択画面は、自分の使用する検索エンジンについて、適切な情報に基づいた選択を下す機会を消費者に提供する。Googleと競合する企業が市場シェアを拡大するに当たっての障壁を軽減するのにも効果的である。競合他社は、プライバシーや個人データの収集および利用方法などの問題を回避可能な代替検索エンジンの選択肢を消費者に提示できるからだ」と語った。

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この要請は、「Digital Platform Services Inquiry」(デジタルプラットフォームサービスに関する調査)の第3次中間報告(PDF)の一環として行われた。この5年間にわたる調査で、ACCCは「Google検索」の市場での優位性について具体的に調べた。
ACCCの中間報告によると、Googleは現在、オンライン検索市場で94%のシェアを保有しているという。この大きな要因は、Google検索が「Google Chrome」とAppleの「Safari」であらかじめデフォルトの検索エンジンとして設定されていることだ。ChromeとSafariのブラウザー市場における合計シェアはデスクトップデバイスで80%以上、モバイルデバイスでほぼ90%に上る。
ACCCによると、GoogleはSafariのデフォルトの検索エンジンであることから大きな利益を得ており、Safariのデフォルト検索エンジン、そして、Appleデバイス上の「Siri」と「Spotlight」の検索クエリのデフォルトプロバイダーであるおかげで年間約80億ドル~120億ドルの広告売り上げを得ていると推定されるという。
ただし、同社がGoogle検索をデフォルト検索エンジンにしてもらうためにMozillaに支払っているロイヤリティーは、Mozilla「Firefox」の全世界年間売上高の90%以上を占める、ということもACCCは指摘している。
こうした同社の市場での優位性と主要な検索アクセスポイントの掌握が原因で、革新的なサービスが開発されることが減っており、そうしたサービスのリーチが制限されている可能性がある、とACCCは述べた。革新的なサービスには、「DuckDuckGo」や「Brave」など、プライバシーと最小限のデータ収集を重視する検索エンジンが含まれる。
選択画面という概念は新しいものではない。Googleは2019年、EUの規則に準拠するため、欧州の一部の国で新しい「Android」デバイスに選択画面を表示した。
しかし、EUの選択画面措置は、EUにおけるAndroidの選択画面のデザインと、選択画面が新しいデバイスにしか表示されなかったことが原因で、市場集中度と消費者へのリーチの両方において、「限定的な影響」しかなかった、とACCCは述べている。

Androidデバイスでの選択画面の例
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ACCCは、オーストラリア版の選択画面に望むことを詳細に説明し、この措置をまず新規および既存のAndroidモバイルデバイスと、これらのAndroidモバイルデバイス上のすべての検索アクセスポイントに適用する必要があると述べた。
選択画面措置には、事前定義された基準を満たすプロバイダーが検索サービスをほかの商品やサービスと結び付けたり、バンドルしたりするのを制限することも含まれる可能性がある、とACCCは言い添えた。
中間報告で警告が発せられたことは、ほかにもある。例えば、70%の消費者がブラウザーや検索エンジンによるデータおよび個人情報の収集に懸念を表明しているにもかかわらず、ACCCの2021年の消費者調査で、プライバシーに配慮した検索エンジンやモバイルブラウザーの存在を認識している回答者は3分の1以下だった。
調査では、35%の消費者がモバイルデバイスのデフォルトブラウザーを変更する方法を知らないか、あるいは、よく理解していないことも明らかになった。デスクトップでは、5人に1人の消費者が同じ問題を抱えていた。
ACCCは9月、オーストラリアの広告テクノロジー市場に関する調査の一環として、Googleの広告テクノロジー慣行を批判し、同社が「体系的な競争の懸念」を生み出していると非難した。
ACCCがオープンディスプレイ広告(一般的な検索エンジンで表示される広告やオープンチャネルで取引されるクラシファイドサイトを除くオンライン広告)を分析した結果、オーストラリアで使用されている4つの主要な広告テクノロジーサービスにおけるGoogleのインプレッションシェアは70~100%で、売り上げ情報が公開されている広告テクノロジーサービスにおけるGoogleの売り上げシェアは40~70%であることが明らかになった。
それらの情報が明らかになった後、ACCCは広告テクノロジーサービスに関する調査を終了した。ACCCは現在、Digital Platform Services Inquiryの一環として、より広範な広告テクノロジーの変更を実装する方法を検討している。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。