はじめに
本連載は、コロナ禍で注目が集まったHR(人材)トピックスを取り上げ、働く現場の変化を捉えることで、読者の皆さんの業務やキャリア形成に生かせる見通しを提供することを目指しています。第3回となる今回は、前回に引き続き「リモートワーク」をトピックに取り上げます。前回の記事ではリモートワークのメリットに焦点を当てましたが、当然ながら障壁も存在します。今回は主にマネージャーの視点から見た障壁と乗り越え方について、すぐにできるものと少し未来の見通しを紹介します。
大きな障壁である対面コミュニケーションの減少
2020年8月時点で、勤務時間の半分以上がリモートワークの300人に「リモートワークで社内の対面コミュニケーションが減少したことは、自身にとって良いことですか。悪いことですか」と聞いた結果が以下です(図1)。

※図表内の「評価できない」という回答は「社内の対面コミュニケーションは減少していないので、評価ができない」という意味(出典:カオナビHRテクノロジー総研)
この図表を見ると、「評価できない」の2.7%を除き、リモートワークでほとんどの人が「社内の対面コミュニケーションの減少」を実感していると分かります。
興味深いのは、社内の対面コミュニケーションの減少を約4人に1人は「良い」と評価していることです。実は「会議などの無駄なコミュニケーションの減少」はリモートワークのメリットとして比較的上位に挙がる項目で、効率の向上を肯定的に評価しているのかもしれません。
とはいえ「悪い」という評価が40%と多数派なことは明らかで、やはり「社内の対面コミュニケーションの減少」はリモートワークの大きな障壁の一つといえそうです。さらに言えば、「良い」と肯定的に評価する層は対面コミュニケーションが減った現状を維持したいと思うはずなので、「悪い」と評価する層との溝が生まれることも厄介な問題でしょう。
マネージャーはつらいよ、リモートワーク?
年代、性別、子どもの有無、所属する会社規模といった回答者の属性によって、リモートワークに対する実感に差があるのかを調べた結果、大きなギャップがあったのは「部下がいるか、いないか」でした。
リモートワークの働きやすさについては、部下あり群の方が「働きづらい派」が多く、マネージャーはメンバーよりも相対的に「働きづらい」と感じているようです(図2)。生産性については「生産性向上派」「生産性低下派」ともに部下あり群(マネージャー)が高く、「リモートワークによる変化が良くも悪くも大きいのが、部下を持つマネージャーである」といえそうです(図3)。

(出典:カオナビHRテクノロジー総研)

(出典:カオナビHRテクノロジー総研)
「さぼっているのでは?」「さぼっていると思われているのでは?」の応酬
「リモートワークにおける不安」でも、上司と部下のギャップが表れています。「リモートワークをしている中で、不安に感じることを教えてください(選択式・複数回答可)」という質問の回答において、上司と部下で数値に開きがあった項目を抜粋したのが図4です。

(出典:カオナビHRテクノロジー総研)
この結果自体は上司としての責任感を表しているようにも感じられますが、事実として上司の約5人に1人は「周りがさぼっている」ことを不安に感じており、逆に部下側はそのような不安はあまりないようです。
では部下側はどのような不安を持っているかというと、「自分がさぼっていると周りに思われているのではないか」ということを、約4人に1人が感じています(図5)。実際、上司の約5人に1人は「周りがさぼっている」ことを不安に感じているので、この部下側の不安はあながち間違っていないのですが、何とも世知辛い結果です。

(出典:カオナビHRテクノロジー総研)