DXに終わりはあるか--今さら聞けない疑問をまとめて解説

Mark Samuels (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 川村インターナショナル

2021-11-09 07:30

デジタルトランスフォーメーションとは

 デジタルトランスフォーメーション(DX)は、デジタルテクノロジーを使用してプロセスを作り変え、効率や効果を高める。その目的は、テクノロジーによって既存のサービスをデジタル形式で再現するだけでなく、そのサービスを大幅に優れたものへと変えることだ。

 デジタルトランスフォーメーションには多種多様なテクノロジーが関連するが、現在、最も注目されているトピックは、クラウドコンピューティング、モノのインターネット(Internet of Things:IoT)、ビッグデータ、人工知能だ。

 しかし、これはテクノロジーだけの話ではない。ビジネスプロセスと企業文化の変化も、これらのイニシアチブの成功において同じくらい重要になる。デジタルトランスフォーメーションプロジェクトは多くの場合、既存の大規模組織が俊敏なデジタル専門の競合に対抗するための手段だ。これらのプロジェクトは広範囲にわたる壮大なものになりがちだが、リスクがないわけではない。

 デジタルトランスフォーメーションはIT業界で最もよく使われるフレーズの1つではあるものの、その定義はさまざまだ。誇大広告、表面的な情報、混乱があるとしても、デジタルトランスフォーメーションが企業文化にかなり重要な変化を起こすということには、誰もが同意するだろう。

デジタルトランスフォーメーションプロジェクトに含まれるもの

 デジタル化とは、単純により多くのテクノロジーシステムやサービスを導入することだとよく言われるが、実際はそうではない。真のデジタルトランスフォーメーションプロジェクトでは、従来の手法に手を加えたり改善したりするのではなく、ビジネスモデルとビジネスプロセスを根本的に再考することになる。

 この創造的な要件は、ビジネスリーダーにとって依然として厳しい課題だ。Cass Business Schoolの調査によると、大半の組織は新たなアイデアを考え出すことに関して大きな問題を抱えていないが、斬新なビジネスモデルを導入することや、良いアイデアを組織の目標に変えることには、多くの企業が失敗しているという。

 この革新と実行のギャップを見ると、以前からデジタル化と創造的破壊が俊敏なスタートアップの専売特許とみなされてきた理由が分かる。だが、必ずしもそうとは限らない。デジタルトランスフォーメーションの優れた事例は、エンタープライズセクターにもある。

デジタルトランスフォーメーションの例

 レガシーシステムからクラウドプラットフォームへの移行は、デジタルトランスフォーメーションの例としてよく挙げられる。古いシステムをクラウドに移せば、新しいユーザーの要望に応じてアプリケーションのアップデートや変更を実施するのが容易になる。この場合、デジタルトランスフォーメーションは俊敏で柔軟なIT運用のサポートに役立つ。つまり、既存のプロセスの効率と効果を大幅に高めるということだ。

 非効率な作業プロセスの変更や廃止にテクノロジーを使用することも、デジタルトランスフォーメーションの良い例だ。たとえば、紙の記録のデジタル化について考えてみよう。テクノロジーを利用して組織での情報記録の方法を変革することで、紙の記録の時代には考えられなかった方法で、あるいは少なくとも扱えなかった方法で、デジタル記録を検索してレポートを実行することが可能になる。

 デジタルトランスフォーメーションではクラウドベースのプラットフォームやサービスがよく使用されるが、新興テクノロジーが採用されることもある。たとえば一部の小売企業は、顧客が仮想現実(VR)メガネを使用して自宅から快適に自社の家具を視覚化できるようにしている。このケースでは、小売店での従来の物理的なやりとりが、デジタル化によってバーチャルな関係に変わり、顧客は離れた場所から商品を試して購入することができる。

デジタルトランスフォーメーションの重要性

 デジタルトランスフォーメーションの利点に疑問を抱く人もいたが、デジタル化の力は新型コロナウイルス感染症のパンデミック下において、懐疑的な見方をする多くの人から賛同を得た。

 ロックダウンとソーシャルディスタンスが始まったとき、企業が極めて困難な状況下で可能な限り通常業務を続けられるように支えたのは、デジタルトランスフォーメーション(そしてその作業を実行したIT部門)だった。最高情報責任者(CIO)とそのITチームは、自社が突然直面した課題に対するテクノロジーソリューションを考え出す必要に迫られた。

 デジタルトランスフォーメーション戦略は驚異的なペースで進められた。経営陣は、以前ならビデオ会議や共同作業のテクノロジーへの複数年にわたる投資に踏み切れなかったかもしれないが、リモートワーク戦略を数日、あるいは数時間で策定するようIT部門に命じた。

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