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大手IT企業の業績を上期決算から読み解く--DX需要の拡大で好調に転じる

田中克己

2021-11-12 07:00

 大手IT企業の業績が回復し、2021年度は2ケタ成長になりそうな勢いだ。2020年度は新型コロナウイルス感染症などの影響で横ばいだったが、2021年度は本格化するデジタル変革(DX)の需要に応えることで、大きな成長と遂げようとしている。2021年度上期の決算説明会では、「DXが上期から本格化する」(野村総合研究所〈NRI〉の此本臣吾会長兼社長)、「極めて好調」(インターネットイニシアティブ〈IIJ〉の勝栄一郎社長)などとし、期初の通期予想を上方修正するIT企業が相次いだ(ここでは、売上収益も売上高と表記する)。

 調査会社IDC Japanによると、2020年の国内ITサービス市場は前年比2.8%減だったが、2021年はプロジェクトベース市場を中心に回復が進み、2020~2025年の年平均成長率(CAGR)を2.4%と予測する。情報サービス産業協会が10月28日に発表した「情報サービス業の売り上げ見通し」(DI=増加から減少を引いたもの)も、2021年10~12月に35.6ポイント増で前年同期の5.3ポイント減から大きく改善する。大手IT企業8社の2021年度上期の合計売上高も前年同期比で9.8%増、営業利益も同43.6%増となり、2020年度上期の減収減益から大幅な増収増益に転換する。

 NRIは2021年度通期の売り上げを100億円、営業利益を80億円にそれぞれ上方修正し、売上高を前年度比9%増の6000億円、営業利益を同28.8%増の1040億円とした。中でもDX関連の売り上げが上期に前年同期比17.6%増の958億円に達する。新規ビジネスの立ち上げだけではなく、業務プロセスに人工知能(AI)などを活用した改革の動きが多くの産業で活発化し、「オンラインビジネスへの移行に躊躇(ちゅうちょ)することもなくなってきた」(此本社長)

 TISも通期の売り上げを100億円、営業利益を35億円にそれぞれ上方修正し、売上高が同7.1%増の4800億円、営業利益が同13.7%増の520億円とした。DX需要の拡大や東南アジアIT企業の合併買収(M&A)などによる。岡本安史社長は11月5日の上期決算説明会で、社会課題解決型サービス事業が順調に進んでいるとし、特にキャッシュレス化に応えるペイメント事業(決済関連プラットフォームなど)を成長エンジンに据えて、クレジットSaaSなど品ぞろえを強化する考えを明かした。

 IIJも通期予想の売り上げを25億円増の2285億円(前年度比7.3%増)、営業利益を45億円増の220億円(同54.4%増)にそれぞれ上方修正した。勝社長は「企業のデジタル化が進んでいる」ことなどを好調理由に挙げる。「全てのモノがインターネットにつながり、インターネット上で構築される時代が到来した」ということだという。上期の業績から見えるのは、IPサービスが13.2%増、セキュリティサービスが16.6%増などとネットワークサービスが大きく伸びていること。クラウドサービスも10%超で成長する。

 日鉄ソリューションズ(NSSOL)も通期の売り上げを50億円(2700億円)、営業利益を25億円(277億円)と、期初計画よりそれぞれ積み上げた。森田宏之社長は上期決算説明会で、「IT投資は着実に回復している。DXの取り組みを強めている」とし、デジタル製造業などの注力領域を年率10%で成長させる計画を披露する。

 一方、NTTデータや伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)、SCSK、日本ユニシスは通期予想を据え置いた。NTTデータの本間洋社長は11月9日の上期決算説明会で、「上期は好調な決算で、通期予想を達成する見通し」と語り、上期に売り上げが12%も伸び、期初の通期予想の1.8%増は達成可能とする。しかし、「上期は円安分を除くと10%増だが、前年同期の横ばいからの反動もある」ことに加えて、デジタルの動きが加速するフォローの風が吹いている一方、交通や旅行、サービス業など新型コロナの影響が大きな産業がIT投資を控える可能性を予想する。

 CTCの柘植一郎社長は上期決算説明会で、「好調なモメンタムは下期も続く」としたものの、「まだどうなるのか分からない。第4四半期に大きな案件が1つでもずれ込むとインパクトがある」と慎重な見方をする。SCSKも期初の通期予想を変更しなかった。2021年度上期は売り上げ(前年同期比5.4%増の2000億円)も営業利益(同6.5%増の225億円)も過去最高を記録し、「受注もパイプラインも順調」(岡恭彦執行役員常務)なのに、通期予想は売上高4200億円、営業利益480億円のままにする。サービス提案など人材育成に力を入れる方針だが、2022年度に売り上げ5000億円の目標達成はオーガニックな成長だけでは厳しいだろう。新規事業創出などが課題になる。

 日本ユニシスの平岡昭良社長は11月2日の上期決算説明会で、「DX関連案件の拡大で、売り上げが9億円増の1459億円、営業利益が11億円増の130億円となった」と語ったが、他社に比べると、売り上げの伸び率が低い。主な理由は、新型コロナの影響で投資を控えている大手ユーザーが数社あることに加えて、アウトソーシングを成長のドライブに位置付けたことによるものとみられる。同事業の2020年度売り上げは600億円超(総売上高は3097億円)だが、「来年、再来年には1000億円を目指す」(平岡社長)。パブリッククラウド型フルバンキングシステムや小売業向け店舗DXサービス、地域金融機関向け利用型勘定系サービス、EC向けプラットフォームサービスなどの成長にかかっているということだろう。

田中 克己
IT産業ジャーナリスト
日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任、2010年1月からフリーのITジャーナリスト。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。12年10月からITビジネス研究会代表幹事も務める。35年にわたりIT産業の動向をウォッチし、主な著書は「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路」(日経BP社)、「ニッポンのIT企業」(ITmedia、電子書籍)、「2020年 ITがひろげる未来の可能性」(日経BPコンサルティング、監修)。

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