名刺管理をデジタル化--第一三共が見据える人的資源ネットワーク化

阿久津良和

2021-11-16 07:30

 Sansanは11月10日、新しい働き方を模索するオンラインイベント「Sansan Innovation Summit 2021」を開催。製薬大手、第一三共 DX企画部 デジタルイノベーショングループ 主査 中野暢也氏が登壇して、「人との関係性を生かした組織的なビジネス推進とSmart Workへの貢献」と題して講演した。

 「大事なのは名刺の交換をデジタルに転換すること。常識や思考の変革につながる」(中野)

デジタルの利便性と物足りなさを認識

第一三共 DX企画部 デジタルイノベーショングループ 主査 中野暢也氏
第一三共 DX企画部 デジタルイノベーショングループ 主査 中野暢也氏

 第一三共が名刺管理サービス「Sansan」を導入したのは2019年度。背景には「外部要因であるビジネス、内部要因となるペーパーレスなどのSmart Work、そして規制・ガバナンスと3つの観点」(中野氏)があった。第5期中期計画の軸となった「DX(デジタルトランスフォーメーション)推進によるデータ駆動型経営の実現と先進デジタル技術による全社の変革」に沿って、業務改善に取り組んできている。

 「問題は社外人材の名刺。個人管理に委ねていたが、企業資産として管理、活用していくことの検討を開始した」(中野氏)

 当初は4製品を比較検討し、同年度からSansanの有償評価を開始した同社だが、この時点での利用者数は5部署130人に満たなかった。3カ月の評価期間では、全体の81%が名刺情報へのアクセス向上を実感し、全体の91%が業務効率化につながると回答している。また、全体の33%が同僚の名刺を検索、全体の27%が企業ニュースや人事異動、連絡先変更ニュースを確認していた。

第一三共による名刺管理システムの評価ポイント 第一三共による名刺管理システムの評価ポイント
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 2020年6月には利用範囲を12部署320人、2021年1月にはコーポレート部門を含めた600人と拡大させ、2021年度は全社5割を超える数千レベルまで拡大する予定だったが、コロナ禍による利用状況の変化で2022年度に延期した。

 プロジェクトの進捗を裏付けるのが名刺データの推移である。前述の評価時点では約3万3000枚だが、2020年6月の第1段階は約3万9000枚、2021年1月の第2段階では約4万9000枚、直近は約5万7000枚。

 緩やかに増加した理由としては「コロナ禍のため出社自体や社外との名刺交換(をする機会)が大幅に減少した。また、初期の名刺読み取りを実施していない従業員も多く、推移がなだらかな上昇にとどまっている」(中野氏)

 他方で利用用途も取引先情報検索とともに、社内の人脈検索に用いられるケースが浮き彫りになった。「新規利用者の初期名刺取り込みが進んでいない。現在Sansanとともに検討中だが、解決方法は見えている」(中野氏)という。

 コロナ禍後の働き方について中野氏は「自宅が業務を行う主要な場所に変化し、デジタルによる業務遂行や人との交流に慣れた。さらに仲間とのつながりの大切さを実感し、デジタルの利便性と物足りなさを認識した状態。一言でまとめれば『歴史的な転換点』である。個人の働き方を最適化する『Anywhere & Anything』だ」と認識している。

 だが、それでも名刺交換という商習慣は消えないと中野氏は強調した。「名前を交換する場所はデジタルが中心。紙の名刺は必要な場面で使用し、名刺ではなく名前の交換が重要になる。つまり名字がデジタルとなり、Smart Workにつながっていく。弊社も推進したい」(中野氏)

 同社は、人的資源データから構築したデータベースを検索エンジンなどでネットワーク化し、企業競争力の向上やビジネス施策に活用していく。2021年度は生産性向上と業務高度化を目的に「Microsoft Teams」と連携評価して、2022年度はSansanの拡張展開、2023年度は社内外の知見情報を可視化、2024年度はデータ駆動型の組織的ビジネス推進に着手する。

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