日本マイクロソフトは11月17日、官公庁に対するデジタルトランスフォーメーション(DX)支援の取り組み状況について記者説明会を開催した。
同社は、2018年度から産業別注力分野の1つに官公庁を掲げる。2019年9月には、「デジタル・ガバメント統括本部」を設立し、中央省庁や地方自治体で一定の成果を上げてきたが、新たに地方自治体のDXを推進するプログラム「Microsoft Enterprise Accelerator GovTech」と、デジタル庁向けの専任チームを新設している。海外における政府事例の日本市場での展開や、米国本社と連携した支援・開発体制の確立、最新技術ワークショップの実施などを予定している。
同社の官公庁におけるDX推進支援の取り組みの中で、経済産業省は2018年からローコード開発の検証を続ける。「Microsoft Power Platform」を採用し、行政手続きのオンライン基盤となる「gBizFORM」を構築した。その背景には、年間250万件を超える行政手続きがあり、年間件数1万件を超える手続きを種別で見れば全体の4.1%だが、件数では全体の99%を占めるという。
経済産業省がPower Platformで作成したフォーム例(マイクロソフト資料より抜粋)
同省では、目前のオンライン化が可能な案件から着手し、現在は件数ベースで79%、実際に使用された割合は61%に達したとのころ。商務情報政策局 総務課 情報プロジェクト室 室長補佐の伊東あずさ氏は、「規模の大きいものからデジタル化を進めてきたが、残りは紙のままでは許されない。全ての行政手続きをオンライン化する」と状況を説明した。
この他にも、国土交通省 関東地方整備局が4月21日に開設した「関東DX・i-Construction人材育成センター」や「関東DXルーム~Open Innovation Space~」では、マイクロソフトが「Microsoft HoloLens 2」を中核に、「Azure Remote Rendering」や「Microsoft Teams」などを組み合わせた遠隔支援ソリューションを提供している。また、名称が非公開の省庁では、Microsoft Power Platformとアドビの「Adobe Sign」を組み合わせ、紙と印鑑が中心だった承認業務のデジタル化に成功したという。
国土交通省における取り組みの一例(マイクロソフト資料より引用)
某省庁における電子化事例(マイクロソフト資料より引用)
さらに、さいたま市や秋田県由利本荘市、福井県、金沢市といった地方自治体に対してもDX推進の支援を継続している。日本マイクロソフト 業務執行役員 パブリックセクター事業本部 デジタル・ガバメント統括本部長の木村靖氏は、「オンライン会議やリモートワークの浸透に伴い、アジャイル開発が必要となり、顧客からもアジャイルかつローコード開発環境の要望を受けている」と、官公庁自身がDX推進に対する課題意識を持っていることを明らかにした。
こうした取り組みの中で日本マイクロソフトは、官公庁自身のDX推進を支援する「Microsoft Enterprise Accelerator GovTech」を新たなプログラムとして立ち上げた。MaaS Tech Japan、Momo、VOTE FOR、エーティーエル システムズ、エムティーアイ、ヘッドウォータースの組織と連携して、地方自治体に対し、共同提案やパートナーエコシステムの構築、共同マーケティングなどを実施する。
政府のデジタル庁に対しても専任チームを新設。詳細は明らかにされなかったが、「米国本社と連携して、製品に関するロードマップやトラブルシューティング、新機能の要望などを上げていく。日本のサービスで完結せずに米国本社と一体で支援する体制」(木村氏)などと説明した。