Gartnerが先頃発表した「IT部門およびユーザーに影響を与え得る、2022年以降に向けた重要な戦略的展望トップ10」のうち、3つの内容について筆者なりに深堀りしてみたい。テーマは、これからの「マネージャーの在り方」「サイバー攻撃の捉え方」「インターネットの進化」である。
Gartnerが「2022年以降の戦略的展望トップ10」を発表
Gartnerが発表した2022年以降に向けた重要な戦略的展望のトップ10は、次の通りである。
Gartnerが発表した「2022年以降の戦略的展望トップ10」(出典:Gartner)
- 2025年までに、シンセティックデータによって顧客の個人データの収集が減少し、プライバシー侵害制裁措置の70%が削減される。
- 2024年までに、消費者の40%は収集された自身の個人データの価値を意図的に下げて収益化を困難にするために、行動追跡指標の裏をかくようになる。
- 2027年までに、Fortune 20企業の4分の1は、ニューロマイニングを利用して潜在意識下の行動に大きな影響を与える企業に取って代わられる。
- 2024年までに、企業チームの30%では仕事の自律化とハイブリッド化により上司不在になる。
- 2026年末まで、アフリカ全体で開発者の人材が30%増加することで、アフリカは世界をリードするスタートアップエコシステムに生まれ変わり、ベンチャー投資の増加率でアジアと肩を並べる。
- 2024年までに、調査対象のCIO(最高情報責任者)の80%は業績の向上が加速した理由の上位5項目に、コンポーザビリティーによるモジュール型のビジネス再設計を挙げる。
- 2024年までに、サイバー攻撃が重要インフラストラクチャーに大きな障害を引き起こし、G20加盟国は物理的な攻撃を宣言して反撃する。
- 2025年までに、企業の75%は「適合性の低い顧客を維持するコスト」が「適合性の高い顧客を獲得するコスト」を上回ることを理由に、適合性の低い顧客と「決別」する。
- 2026年までに、NFT(非代替性トークン) のゲーミフィケーションを活用する企業は、最も評価の高い企業の上位10社にランクインする。
- 2027年までに、低軌道衛星によって世界の最貧困層の10億人がインターネットを利用できるようになり、そのうちの50%が貧困から抜け出す。
以上、トップ10と言ってもランキングというわけではなく、10の展望を挙げた格好だ。このうち、(4)(7)(10)について深堀りしてみたい。
まず、4番目については、マネージャー(上司)の在り方を問うものとも受け取れる。Gartnerはこの項目を挙げた意図として、「これからのマネージャーの役割から『管理』を切り離すことが不可欠になる」と説く。
筆者がこの4つ目の内容を受けて訴えたいのは、「これからのマネージャーは担当する事業のビジョンを部下に明示せよ」ということだ。
先頃取材して印象深かった富士通のヘルシーリビング事業の例を挙げたい。富士通は「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていく」というパーパス(存在意義)を掲げているが、同社のヘルシーリビング事業の責任者はこのパーパスの意を受ける形で、「あらゆる人のライフサイエンスを最大化し、個人の可能性を拡張し続けられる世界を創る」という事業ビジョンを掲げた。これによって同事業部門の社員が何をやるべきか、明示した格好だ。この取材を通じて、筆者はこれからのマネージャーに求められる新たな時代のマネジメントの方向性を見た気がした。