米国で急激にインフレが進んでいることや、サプライチェーンに混乱が起きていることに加え、ホリデーシーズンに入ると、消費者が価格だけでなく在庫の有無も気に掛けるようになる。こうした厳しい条件は、2021年第4四半期のWalmartにとってむしろ有利に働く可能性が高い。その理由は、Walmartが持つ技術力とデータだ。
Walmartの2022会計年度第3四半期業績発表によれば、米国の既存店売上高は9.2%増加し、Walmartの1株当たり利益は1.11ドルで、売上高は1405億ドルだった。米国のeコマース事業の売上高は、コロナ禍の影響で前年も大幅に増加したが、2021年も引き続き8%増加した。また同社は、2022会計年度の業績見通しを上方修正し、調整後の1株当たり予想利益を従来の6.20~6.35ドルから6.40ドルに引き上げた。
米国のインフレ率が急上昇していることを考えれば、歴史ある低価格路線小売企業であるWalmartが人気を集めるのは不思議なことではない。しかし、Walmartの技術力がどれだけ高くなっており、蓄積されたデータがどのように活用されているかを知れば、驚く人も多いだろう。
この記事では、インフレやサプライチェーンの混乱が問題になる中、消費者需要が拡大する一方で流動性も高まっている状況で、Walmartが力を発揮できる理由を説明していきたい。
現在のWalmartはテクノロジー企業になっている。Walmartは、以前からテクノロジーの導入には積極的だったが、コロナ禍によって同社のデジタルトランスフォーメーションはさらに加速した。Walmartは走りながらイノベーションを起こしていかざるを得なかったが、その結果、今の同社は独自の立ち位置を確立するまでになった。同社がこれまでに開発してきた主な技術を振り返ってみよう。
- 小売会社向けの配送サービスである「Walmart GoLocal」。今では、米国有数のホームセンターチェーンであるHome Depotもこのサービスを利用している。Walmart独自の運送ドライバープラットフォームである「Spark Driver」は、将来的にはグローバルに展開される予定で、現在は米国の900都市で運用されている。
- 小売会社向けの広告ネットワークである「Walmart Connect」。このサービスは最近勢いを増しており、サプライヤーやマーケットプレイスに出店する店舗の好循環を生み出す弾み車の役割を果たしている。Walmart Connectの売上高は、この2年間で240%近く増加した。同社はまた、The Trade Deskと提携して、同社のオフサイト広告サービスを拡大しようとしている。
- 商店主やサプライヤーがカテゴリーや商品に関する実用的な知見を得るための一連のデータサービスである「Walmart Luminate」。
- 1億6000万点の商品を扱うマーケットプレイスプラットフォームに成長した「Walmart Marketplace」。