人工知能(AI)が絡む話を単独で進めてはいけない。IT部門にどれだけスキルがあっても、また準備が整っていたとしても、概念実証(PoC)にこぎ着けるのが精一杯のはずだ。そこから先に進み、AIを成功に導こうとするのであれば、企業のあらゆる部署にいる人々の協力を仰ぎ、力を合わせて取り組んでいく必要がある。
業界の専門家らは、AIイニシアチブを推進する上で、社内のすべての人々を巻き込む必要があると述べている。Mindtree ConsultingのグローバルヘッドであるSreedhar Bhagavatheeswaran氏は「膨大な量の訓練データと柔軟なコンピュートパワーがあったとしても、AIの実装を成功させるための土台にはならない」と述べた。
AIの実装を成功させるための土台は人だ。それもAIスキルを有した人だけでなく、マーケティングからサプライチェーン管理に至るまでのあらゆる分野の人々が土台なのだ。Capgemini AmericasのAIおよびアナリティクス担当バイスプレジデントであるDan Simion氏によると最近、特にここ1年において、自動化されたプロセスや、人手を介さないプロセスに対するニーズが加速してきており、「企業はリーダーシップチーム内でAIに対する真の理解を得るとともに、利害関係者からの支持を得なければならないということを学んだ」という。
同氏はまた、協調的なAI開発という取り組みには「強力なガバナンスと、社内での宣伝活動、企業の業務機能を横断したAIイニシアチブの採用を加速させるための適切なトレーニングも必要だ」と付け加えた。その鍵は、これらのモデルによって生み出される価値ある洞察を示せるかどうかにかかっている。
Bhagavatheeswaran氏は、AIの普及に向けた取り組みの中で「企業は今では、AIの採用によって業務にインパクトを与えられるような正しいジャーニーと適切なユースケースを洗い出したり、AI運用とガバナンスの仕組みを確立することでAIの活用を進めたり、データエンジニアリングとAIの人材を適切な比率で組み合わせるといった重要な要素を意識している」と述べた。
ここでの落とし穴はもちろん、これらの取り組みの多くが組織の政治学や、単なる惰性によって台無しになってしまうところにある。AIは魅力があり、将来性を備えているように感じられるものの、採用され、受け入れられていくには時間がかかる。The Smart Cubeのデータアナリティクス担当バイスプレジデントのNitin Aggarwal氏は、「企業は訓練セッションの実施に必要な期間と作業を計画するとともに、AIシステムの利用とそれが従来の手法よりも優れている点を継続的に補強していくべきだ」とアドバイスし、「ちょくちょくある小さな勝利を共有し、祝福していくというのは、ものごとを前に進めていく上での実績ある手段だ」と述べた。