「アナログでも回る」業務のデジタル化を地道に進める建築部品メーカーの実直さ

阿久津良和

2021-11-30 07:00

 建築用の金物や住宅用製品、車止めなどを製造、販売するユニオン(大阪市西区)は名刺管理サービス「Sansan」や請求書受領サービス「Bill One」、セミナー管理サービス「Seminar One」を活用して業務のデジタル化を進めている。同社の大阪支店 支店長 石丸晶教氏が、Sansanが11月10日に主催したオンラインイベント「Sansan Innovation Summit 2021」に登壇、「Sansanの提供するサービスを活用し、DX化と生産性の向上を目指す」と題して講演した。

ユニオン 大阪支店 支店長 石丸晶教氏
ユニオン 大阪支店 支店長 石丸晶教氏

 石丸氏は「『わが社にはまだ早い』『アナログでも業務が回っている』など、周りの理解が得られず進まない企業も多い。だが、まずは一歩踏み出してみる。すると視界が変わり、新たな課題が見えてくる。一つ一つ課題を乗り越えることで、自社や自身の成長につながると信じている」とSansanなどで成し得たデジタルトランスフォーメーション(DX)の効果を語った。

当たり前だった業務の“ムダ”に気付く

 従業員数約130人のユニオンは、例に漏れず名刺管理が属人化するという課題を解消するため、2020年6月からSansanを導入した。以下のような背景があったという。

 「建築業界はプロジェクト単位でメンバーが集まり、終わったら解散。せっかくできた人脈が途切れがち。また、(従業員が)マメではなく、得意先の情報や接触履歴を入力しない。顧客情報は貴重な財産だが、面倒臭がってしまう。そして“個人商店化”。知っている顧客のためには頑張るものの、後任への引き継ぎがうまくいかない」(石丸氏)

 ここにコロナ禍による対面営業の難しさや顧客リスト未作成という問題が発生し、オンライン名刺に解決策を求めたという。その結果、さまざまなメリットを獲得できたと石丸氏は解説する。

 「初対面でもオンラインで挨拶や営業ができる。タグ付け機能を使えば業種ごとに分類し、顧客管理が容易。メルマガ(メールマガジン)機能で取得した配信データを利用して、情報発信したいグループを絞り込める」

 だが、定着までの道のりは平坦(へいたん)ではなかったという。「一部の従業員からは即時反応があったものの、一度もログインしないという従業員もいた」(石丸氏)

 そこで同社はいちからPCの使用方法を説明する勉強会を開催。従業員にノートPCを持参させ、Googleアカウントの写真付与やプロフィール作成など、Sansanの主な機能を解説した。

 「ビジネスの始まりは、自ら胸襟を開いて相手に近づかなければならない。オンラインで相手が分からないのは不利だ。(勉強会で)一気に弊社のITリテラシーが向上した」(石丸氏)

 メールの署名やメールマガジンにオンライン名刺のURLコードを挿入するなどの工夫を凝らしたところ、問い合わせやオンライン名刺交換回数が向上し、定着に至ったという。

 Bill Oneの利便性はユニオンにも有効だった。緊急事態宣言によるリモートワーク時も請求書処理による出社を不要にし、振り込みに必要なファームバンキングデータの自動作成や請求書などの保管場所削減に寄与しているという。石丸氏は「日本の労働生産性は低いといわれているが、Bill Oneのおかげで当然として行っていた業務の“ムダ”に気付くことができた」と当時を振り返った。

 セミナー運営を簡素化するSeminar One(旧Sansan Seminar Manager)も導入しているが、そのきっかけは若手従業員の一言だったという。「(営業活動として)ウェビナー開催を提案された。弊社としては高いハードルを感じたものの、デジタルは訪問し切れなかった遠方の顧客にも(メッセージを)届けられる手段」(石丸氏)との判断から導入に至った。

 多くのマーケーターが経験しているとおり、セミナー開催は、参加募集のウェブページ作成から受付処理、リマインドメールの作成など業務は多岐にわたる。一連の処理をマーケティングオートメーション(MA)ツールと連携しながら、最小限の負荷でウェビナーを開催するSeminar Oneについて石丸氏は「より顧客目線で物事を考え、顧客ターゲットを絞り込んで、効果的な情報を発信。そして弊社の強みを再認識することができた」と効果を語る。

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