コロナ禍でも案件金額は2.6倍--「データドリブン」で効果上げたNEC子会社の決断

阿久津良和

2021-12-01 07:00

 「データドリブン」を全社的な基盤に据えている企業は多いが、具体的な成果は獲得できているだろうか――。

NECソリューションイノベータ マーケティング推進本部 フィールドマーケティンググループ シニアマネージャー 飯島圭一氏
NECソリューションイノベータ マーケティング推進本部 フィールドマーケティンググループ シニアマネージャー 飯島圭一氏

 NEC子会社のNECソリューションイノベータ(従業員数1万2344人)もデータドリブンを掲げている1社だ。同社のマーケティング推進本部 フィールドマーケティンググループ シニアマネージャー 飯島圭一氏が、Sansanが11月10日に主催したオンラインイベント「Sansan Innovation Summit 2021」に登壇。「顧客接点を100%デジタルに その意義と効果」と題して講演した。

 「各種データを統合して、CDP(顧客データ基盤)やDMP(データ管理基盤)と呼ばれる1つのデータベースにする。このデータから賢い提案を行う世界観を実現したい」(飯島氏)

外部データとの連携コスト増加

 NECソリューションイノベータは幅広くデジタルを手掛けているが、飯島氏は「従来のエンジニアリングの仕事は縮小していく。われわれの価値を多様な形で回転軸とし、市場に合致する形で提供することが求められている」と市場を俯瞰している。

 この目標を実現するため同社は、2018年4月にマーケティング部門を発足させた。主に顧客需要を掘り起こす役割を担いながらも、「ターゲティングから潜在顧客獲得見込み、顧客育成案件管理、そして契約と営業やマーケティング」(飯島氏)と幅広い活動を続けている。

 当然ながら任務や主要評価指標(KPI)といった組織設定を定めているが、重要なのはデータドリブンという行動指針。その理由として「勝つため。勘と経験から脱却し、データに基づいた科学的に行動する」(飯島氏)ことを重要視している。

 データドリブンを実践することで、勝率と品質の向上、変化に対応できるというが、言葉にするほどデータドリブンは簡単ではなかったと説明する。基礎となるデータ管理は、年々増加するデータ量とデータのクレンジングに多くの工数がかかり、2018年上期から数えたマーケティングオートメーション(MA)ツールの「Pardot(パードット)」で管理するデータ量は3年間で約10倍に増加。必然的に外部データとの連携も困難を来す。

 同社がウェブサイトから取得した顧客などの入力データと信用調査企業の有償データを連携させるだけでも、月35時間の作業や定期的な保守作業が発生している。「たとえば帝国データバンクコードの付与率は69.1%、部署分類情報は27.2%、役職分類入力率は23.4%と満足する品質に至らなかった」(飯島氏)

 データ品質が向上しないため、同社は1年以上マーケティング活動に支障を来し、その結果選択したのが顧客データ統合サービス「Sansan Data Hub」である。

NECソリューションイノベータによるSansan Data Hubの活用状況 NECソリューションイノベータによるSansan Data Hubの活用状況
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 Sansan Data Hubはデータの正規化などによるクレンジングで、精確な顧客マスターを構築するクラウドサービスだ。NECソリューションイノベータはSalesforceに構築したリード情報をデータ連携し、各外部データと連携させてマーケティング活動を行っている。

 作業などから解放された同社のデータクレンジング時間はゼロ、帝国データバンクコード付与率は69.1%→93.6%、部署・役職分類率も部署27.2%→98.6%、役職23.4%→94.2%と劇的に向上したと説明。精度が向上したデータをビジネスインテリジェンス(BI)ツールの「Tableau」で可視化し、「活発な活動部分を科学的に分析して次の一手」(飯島氏)に用いるマーケティングリードを展開してきた。

 具体的には、2018年度上期と比較して案件創出金額は2.4倍、100万円の販売促進費で創出した案件額は2倍、新規リード獲得単価は40倍という。飯島氏は「マーケティング組織発足から2年で、ビジネスの成長に貢献できた」と感想を語っている。

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