子供や若者の教育・訓練のギャップをめぐる懸念は、パンデミック以前から既にありましたが、UNICEFの言葉を借りれば、コロナ禍によって「学びの危機が悪化」する事態となりました。世界の子供の7人に1人が、対面授業のおよそ75%を受けることができずにいます。
このことが、若者の自己開発やスキル習得能力、世界の労働力、ひいては経済に及ぼす影響は深刻です。パンデミック下において失われた世代が出てくること、そしてこの混乱が経済回復を支える彼らの能力にどのような影響を与えるかについて、警鐘を鳴らす声が多く聞かれるのは当然といえます。
7月15日の世界ユース技能デーを前に、国際連合(国連)は次のように指摘しています。「ポストコロナの社会において、若者に対し復興への貢献が求められる中、変化する課題にうまく対応できるスキルと、将来の混乱に適応できる柔軟性を身に付けることが必要になってくる」
だからこそ私たちは、若者が具体的にどのようなスキルを身に付ける必要があるのか、そして彼らがスキルを身に付ける機会を確保する責任がどこにあるのかについて考察しなければなりません。
新しいスキルセット
2020年に起きたパンデミックから、誰もが短期間で多くのことを学ぶ結果となりました。今この時ならではの機会をとらえるために、またビジネスの生き残りのために、企業は目まぐるしく変化する状況に適応するために速やかに意思決定を行う必要がありました。経営幹部から新卒社員までどんな立場であっても、その際の決め手となるのが、データを読み解き、理解する能力です。
多くの組織が労働慣行と消費者行動の長期的な変化に対応しようとする中、このようなトレンドが定着しつつあります。次世代の人材が社会人になる頃には、情報を速やかに解釈し、意思決定を行うことで、これらの変化に対応することが、当たり前のこととして求められるようになっているはずでしょう。
このような理由から、企業では、自分たちの持つデータの価値を実現する能力への依存度がますます高まっています。これに対応するため、データを読み解き、理解し、疑問を持ち、使いこなす能力を備えた労働者が求められます。つまり、データリテラシーを身に付ける必要があるのです。しかし、QlikとAccentureによる「データリテラシーの人的影響(Human Impact of Data Literacy)」レポートによると、ジュニアマネージャーレベル以下の従業員のうち、今の職務に就く際にデータを効果的に使いこなす準備が十分にできていると回答した人は16%にとどまっています。
このことから、データリテラシーに関して見た場合、雇用主が必要としているものと、新入社員が提供できるものとが大きく乖離している場合が多いことが分かります。究極的には、企業は世界中のあらゆるデータを若手社員に提供することもできるでしょう。しかし、そのデータを活用して意思決定や行動を起こすためのノウハウがあって初めて、データが価値あるものとなるのです。
十分なスキルがないまま人々が社会人になれば、産業界が復興を遂げ、将来の混乱に適応するための柔軟性を構築する能力が制限されてしまわないでしょうか。これを解決するには、これまでのスキル開発の在り方を振り返り、必要なデータスキルを確実に身に付けられるようにする必要があるのではないでしょうか。