ドローン、拡張現実(AR)などの技術をゴルフと結びつけて考える人はあまりいないだろうが、ゴルフのヨーロピアンツアーでは、まさしく今、これらのツールのテストが行われている。
提供:European Tour
スペインのマドリードで開催されたスペインオープン(オープン・デ・エスパーニャ)では、ヨーロピアンツアーとライダーカップの最高技術責任者(CTO)であるMichael Cole氏が率いるチームが、大手通信事業者のTelefonicaと協力して、ドローンで優れた映像を撮影し、テレビ放送の品質を改善するテストを行った。テストに使用されたのは有線ドローン1台と無線の飛行ドローン1台で、どちらも5Gで接続されていた。
「私たちがテストしていたユースケースの一環が、この技術をバックエンドの作業プロセスに組み込むことだった」とCole氏は話した。「このテストは、制作技術の業務プロセスやワークフローに、ドローンが持つ包括的な機能をどんな風に導入できるかを模索するために行われた」
Cole氏のチームは2021年、英国のウェントワースクラブで開催されたBMW PGAチャンピオンシップで、別の技術のユースケースも開拓している。ゲーミングテクノロジーを利用した拡張現実(AR)のエクスペリエンスを立ち上げ、同氏がウェントワースの18番ホールの「デジタルツイン」と呼ぶものを構築したのだ。
これはすべてクラウドから提供された。ホスピタリティエリアとマーチャンダイズエリアの大型スクリーンに映し出され、観客が選手やボールの位置などのリアルタイムの最新情報をライブで見ることができるようになっていた。Cole氏は、このアニメーションを使えば、観客が他のホールで何が起こっているかを知ることができると話した。同氏は、IT企業と協力してこの仕組みを拡大したいと考えている。
「これは概念実証だったため、組織内の開発者と協力して作成した。しかし将来、このコンセプトを推し進めるためには、外部の技術パートナーと協力すべきだと考えている」と同氏は言う。
ヨーロピアンツアーのコース上で起きているイノベーションは、ドローンや仮想現実を使ったものだけではない。Cole氏のチームは、ビッグデータやモビリティなど、さまざまな分野の先端技術に関する取り組みをパートナーと協力しながら進めている。
「イノベーションラボ」と聞いて、時間がゆったりと進む緑豊かなゴルフ場を思い浮かべる人は少ないだろうが、実際にはゴルフの大会で新技術のテストを行うIT企業の数は増えている。
Cole氏は、これらの革新的な概念実証の試みは、ゴルフ選手やファンに大きなメリットをもたらすだけでなく、ほかの分野におけるデジタル技術の応用例の可能性を示す機会にもなると考えている。
同氏は、米ZDNetの取材に対して、「私たちは、このプラットフォームで私たちと協力しながら新技術を試したい組織にとっては、究極のイノベーションプラットフォームだ」と話した。