本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、UiPath 代表取締役CEOの長谷川康一氏と、米Datadog COOのAdam Blitzer氏の発言を紹介する。
「『現場×エンパシー×RPA×AI』という日本のデジタルが世界をリードする」
(UiPath 代表取締役CEOの長谷川康一氏)
UiPath 代表取締役CEOの長谷川康一氏
米UiPathの日本法人UiPathは12月1〜15日の期間、「新しい社会のはたらき方を発見する自動化の祭典」と銘打ったプライベートイベント「Reboot Work Festival Japan 2021」をオンラインで開催している。長谷川氏の冒頭の発言はそのイベントの初日キーノートで、「日本のデジタルが世界をリードする」と強調したものである。
長谷川氏は「現場が輝く経営を実現するUiPathの新たなオートメーション」と題したキーノートで、「デジタル時代のトレンド」や「UiPathの製品戦略」について語った。製品戦略については同日オンラインで開かれた新製品発表会見での説明と同じ内容なので関連記事をご覧いただくとして、ここではキーノートでのトレンドにおいて「人材」にまつわる2つの話を紹介しておこう。
1つは、「テクノロジーはITからデジタルへ」という話。長谷川氏は「デジタルシフトには3つのトレンドがある」として、「まず、音声や画像のデータが私たちの周りで日々膨大に発生している。次にそれらを有効活用するために、さまざまなクラウドや人工知能(AI)のサービスが出てきた。そして最近では、ローコード・ノーコードと呼ばれる開発ツールが出てきたことによって、これまでソフトウェアをエンジニアに頼んで作ってもらっていたのが、業務現場で主体的に作れるようになってきた」と説明した。
その上で、「デジタルとデジタルの掛け算においてさまざまな組み合わせを発想し、それを実現できる人材が必要になってきているのではないか」と問いかけた(図1)。
図1:デジタルシフトの3つのトレンド(UiPathの「Reboot Work Festival Japan 2021」より)
もう1つは、「『エンパシー』を持った人材がカギを握る」という話。長谷川氏は「非対面、非接触が求められる、コロナと共に生きる時代というのは、何となく冷たい世界になるような気がする。コンピュータの画面上でAIが作った数字だけを見ていて、本当にお客さまの気持ちが分かるだろうか」と疑問を投げかけた。
そして、こう語った。
「エンパシーとは、相手の気持ちになること。デジタル時代ではこれまでにも増して、このエンパシーが不可欠になると考えている。今ではデジタルと言えばAIが話題になることが多いが、日本はAIだけでは米国や中国に追いつけないだろう。では、日本がデジタルで世界と戦い、リードしていくためには何が必要か。私は『現場×エンパシー×RPA(ロボティックプロセスオートメーション)×AI』」という掛け合わせが日本のデジタルの真骨頂であり、世界をリードする決め手になると確信している」
長谷川氏はこれまで「RPA×AI」の相乗効果について盛んに訴えてきたが、それに「現場×エンパシー」が加わった格好だ。その理屈もさることながら、この分野への同氏の熱い思いがグッと伝わってくるキーノートスピーチだった。