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富士通Japanの砂田社長に聞く、サービスモデルへの道

田中克己

2021-12-07 07:00

 富士通Japan(FJJ)の代表取締役社長に2021年4月1日付で就任した砂田敬之氏は、同社をどんな方向に進めようとしているのだろう。日本国内の企業や公共にITサービスを提供する富士通グループの中核会社として2020年10月に設立したFJJは、システム販売の富士通マーケティング(FJM)やデータセンター事業などを展開する富士通エフ・アイ・ピー(富士通FIP)などに加えて、富士通系システムインテグレーター(SIer)を統合・再編し、この10月には1万2000人の規模になった。砂田社長は「責任感の強い男」と語り、サービスモデルを目指す決意を説く。自治体などを長年担当してきた砂田社長に話を聞いた。

富士通Japan 代表取締役社長の砂田敬之氏
富士通Japan 代表取締役社長の砂田敬之氏

--富士通グループの中で、富士通Japanはどのような位置付けなのか。

砂田(以下同):いろんな見方があるが、簡単に言えば、国内の民間企業と公共にサービスを提供すること。公共とは、自治体とヘルスケア(医療)、文教になる。別の言い方をすると、富士通は海外に向けて展開する企業を支援するのに対して、当社は日本に根差した企業を支援する。ただし、官公庁や電力会社、新聞社などは富士通になる。

--FJJの前身とも言えるFJMと大きく変わったようには思えない。

 FJMの領域に公共系とフィールドなどを加えた。それに、FJMとは方向性が違う。FJMは販売会社で、顧客が要望するものなら、何でも提供するスタンスだった。何でも売っていたら、利益だけではなく、スキルセットを蓄積できない。時間はかかるが、強みに集中する。

--FJMにはディストリビューターの機能もあったが、ディーラーとの関係を変わるようだ。

 ディーラーには、ソリューションディーラーとプロダクトディーラーがあるが、付加価値の少ないサーバーなどのハードウェアやミドルウェアを卸すディストリビューターは止めていく。全国系パートナーには富士通に移行することを既に伝えている。ただし、当社が開発したパッケージソフトやSoftware as a Service(SaaS)の販売では、パートナーを支援していく。

 SIerの統合などで当社のパッケージソフトやSaaSの種類が1000を超えており、全国では売れないものやパートナー経由など外の方がいいものがある。それらを担ぐことにするなどし、断捨離をしている。10月にFJJの持ちものを整理し、2021年度中にパートナーのものを含めて整理し、FJJのラインアップをそろえる。本当は4月までにしたかったのだが、1年遅れてしまった。

--「as a Service」といったサービスモデルにしていくということか。

 パッケージソフトには、民需向けの統合業務システム「GLOVIA」や自治体向けの住民情報システム「MICJET」、医療向けの電子カルテシステム「HOPE」、文教向けの図書館システムなどがあり、早くからSaaS化にも取り組んできた。

 例えば、電子申請など自治体のフロント向けSaaS(当時はApplication Service Provider:ASP)は2002年からで、先駆的な自治体向けSaaSになる。当社は、こうしたパッケージソフトやSaaSの開発部隊を中心にする。一方、富士通はSAPなど外のパッケージソフトとシステムインテグレーション(SI)サービスを展開する。

--これらSaaSのクラウド基盤に何を使うのか。

 これまでは富士通の「FUJITSU Hybrid IT Service FJcloud」を中心にしていた(FJcloudにはVと呼ぶニフティ系と、Oと呼ぶOpenStack系の2種類がある)が、これからはFJcloudにこだわらないクラウドフリーにし、Infrastructure as a Service(IaaS)上のアプリ層でビジネスをする。

--政府が10月末、自治体のガバメントクラウドにAmazon Web Services(AWS)とGoogle Cloud Platform(GCP)を採択し、神戸市など8自治体が基幹業務システムなどをオンプレミスからクラウドに移行させることを公表した。FJJはなぜ、その入札に参加しなかったのか。

 答えは明確だ。FJJはクラウド基盤を持っていないからだ。それに、これからはクラウドフリーでないと、ビジネスができなくなる。

--ITベンダーに依存する自治体は少なくない。業務やITのスキルが低いこともあるのだろう。そうした中で、海外クラウドベンダーがIaaSを獲得したからといって、アプリ層まで容易に手を出せないと見ている。本当にそうなのだろうか。

 当社には業務スキルの高いシステムエンジニア(SE)がおり、ソリューションを作り、最適解を提案し、参考になる他自治体の事例を紹介するなどの強みもある。SEは全従業員約1万2000人のうち約7000人になる。(国内オフショア部隊の)ジャパン・グローバルゲートウェイ本部JGG)に約1000人を配置する。

--約2800人の営業は、富士通と同様に顧客の課題解決を担うビジネスプロデューサーになる。

 富士通と同じだが、少し違うのはアカウント(顧客担当)に加えて、エリア担当がいること。地域ごとに戦略が異なるからだ。例えば、ある地域は電力系を基軸に、別の地域は新聞系を基軸に展開するなどし、地域との関係をより強固なものにする。

--砂田社長はFJJをどんな会社にしていくのか。デジタル変革(DX)プロジェクト「Fujitsu Transformation」(フジトラ)を推進するとともに、FJJ固有の改革にも取り組んでいる。

 悩んでいる。本来なら、私が就任した4月に従業員に伝えるべきだったが、制度設計をはじめとするいろいろなことがあって、筋を通したものが作れていない。だが、当社はソリューションを基軸に顧客に価値を提供することにある。その私の思いと従業員の思いが一致すればいいと思って、社員とオンラインで会話したり、車座で対話したりして意見を聞いてきた。

--DXプロジェクトに中に、グローバル/グループ全体で統合基幹業務システム(ERP)を1つにまとめる「One ERP」はフジトラの第一歩でもある。

 実は、社内情報システムはFJM製、FIP製、富士通製の3つを使っており、現場に負担をかけている。入力が3回になることもあり、現場が疲弊しているかと心配していたが、元気なのでほっとしている。各社がいろんなことをやってきたこともある。

 例えば、サブスクリプションの仕組みはFIP製のシステムにしかないなど、現場が工夫してきた結果が現在の状態になっている。そこは継承していくが、従量制はFIPのシステムで、定額制は富士通のシステムにするなどの混乱もある。それでも、逆境に強いIT部門のメンバーがおり、2024年までに対応したスケジュールでOne ERPを進めている。

◇ ◇ ◇

 砂田社長は「最後までやり切ること。やらないと責任をとれない」と、顧客対応の重要性を説く。背景には、自治体担当時代のトラブル経験などもある。ある年の3月末に住民記録の住所録設定を変更したら、文字化けしたという。引っ越しのピーク時なので、企業の従業員や家族は文字化けのまま、移転先の自治体にいってしまうことになる。そこで、人海戦術で全国の自治体を回って、自治体の指導の下で直す。そんな“責任感の強い男”と自身を語る60歳になった砂田社長は、どんな企業像を描くのだろう。

田中 克己
IT産業ジャーナリスト
日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任、2010年1月からフリーのITジャーナリスト。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。12年10月からITビジネス研究会代表幹事も務める。35年にわたりIT産業の動向をウォッチし、主な著書は「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路」(日経BP社)、「ニッポンのIT企業」(ITmedia、電子書籍)、「2020年 ITがひろげる未来の可能性」(日経BPコンサルティング、監修)。

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