AWS re:Invent

AWSが示した多様な業界向けのアプローチ--re:Invent

Larry Dignan (ZDNET.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2021-12-03 18:55

 Amazon Web Services(AWS)は、長年に渡って個別業界向けの戦略を磨き続け、メディア産業や金融サービス業界、通信業界、石油・ガス業界などの大規模市場に合わせて、クラウドを活用したユースケースを開発してきた。「re:Invent 2021」では、同社の個別業界に対するアプローチが進歩していることが見えてきた。

AWS CEO Adam Selipsky
AWSのCEO、Adam Selipsky氏

 AWSの個別業界に対する戦略は進化しており、今や前面に現れつつある。同社の最高経営責任者(CEO)であるAdam Selipski氏の基調講演は、さまざまな業界を変革している先駆者の話を中心に据えたものだった。同氏は話の中で、英国の看護婦であり、視覚化技法の生みの親とも言うべきフローレンス・ナイチンゲールにまで言及した。

 Selipsky氏はまた、AWSは、各業界に特有のユースケースに合わせて設計されたサービスの上に、さらなる抽象レイヤーを構築していく予定だと述べた。

 同氏のメッセージを要約するとすれば、各業界を代表する企業が、AWSのインフラの助けを借りてそれぞれの業界を変革しているということだろう。NASDAQとのパートナーシップに関する話題では、同社がソフトウェアを提供する組織に進化していることが強調された。基調講演に登壇したDISH Wirelessの幹部は、自社の5Gネットワーク、そしてAWSを利用することによって、データドリブンで、高度に自動化された、適応力の高いネットワークを構築したことを説明した。AWSは、大手銀行などを想定したメインフレームの移行を支援するサービスやその他の新サービスも発表した。United Airlinesの幹部はコロナ禍をきっかけとしたクラウドへの移行について語り、3MはAWSを活用してデジタル製品を提供していくつもりだと表明した。

 Selipsky氏は、「クラウドの影響を受けていない業界は存在しない」と述べつつも、アナリストの予想ではIT支出の5〜15%がクラウドに移行しているにすぎないと指摘した。「(クラウドへの移行は)まだ始まったばかりであり、私たちは各業界に特有のユースケースに合わせたサービスを作っている」と同氏は言う。

 Selipsky氏は、「私たちはこれまでも、さまざまな産業に的を絞ったサービスをリリースしてきた」と話すと、そうした例の1つとして、金融サービス業界向けのデータ管理サービスである「Amazon FinSpace」を挙げた。このサービスは、新たな顧客体験を提供しようとする金融サービス企業を支えることを目指している。同社はまた、Goldman Sachsのデータと「AWS Data Exchange」、AWS FinSpaceを組み合わせたサービスである「Goldman Sachs Financial Cloud for Data」の提供が始まることも明らかにした。この取り組みは、Snowflakeの「Financial Services Data Cloud」と同じ方向性のもののようだ。

 多くのSaaS企業が、個別の業界(医療、金融サービス、政府、製造、メディア、通信など)をターゲットとした業界クラウドを提供しようとしている。AWSは、これらの企業ほどあからさまに個別の業界を狙う動きを見せていないかもしれない。ただしAWSは、さまざまな業界に応用可能なサービスバンドルを持つ、強力な業界担当部門を持っている。

 AWSの進化は、時を経るとともに顧客がビジネスパートナーになっていることにある。基調講演では、そのような例がいくつも紹介された。

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