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山谷剛史の「中国ビジネス四方山話」

学校への監視カメラ設置でもなくならない中国のいじめ問題

山谷剛史

2021-12-13 07:00

 日本の文部科学省に相当する中華人民共和国教育部は2021年8月、幼稚園~高校および学校以外の全ての教室に監視カメラを設置し、警備員を配置するよう指示した。既に多くの学校が監視カメラを備えているので、まだ導入していない学校に念押ししたという意味合いが強い。

 報道機関などによると、監視カメラの導入によって防犯効果のほか、教師による学生への体罰や侮辱、学生同士の喧嘩やいじめなどのトラブルなど、保護者が学校に抗議してきたときの状況証拠として使えるという。そうした証拠がないと問題が泥沼化しやすいためだ。

 監視カメラ導入のメリットはトラブル対応だけではない。学校内で教師や学生などの各人が真面目に取り組んでいるかをチェックできるようにするのも目的だとしている。例えば、教師が自分の席で仕事をしているふりをして手抜きをしている様子を上司が発見できるようになる。中国ではまだ体罰を与える教師もいる。そうした行き過ぎた指導を抑える役割もある。また、教師の話を聞かない学生を見つけ出し、指導することも可能となる。

 筆者が聞いたところによると、クラスメイトから金銭を盗んだ犯人を特定したり、テストのカンニング行為を発見したりといった具合だった。現状では、体罰をする教師や悪事を働く学生への対応策となることから、前向きに捉えられている。

 こんな報道もあった。12月2日、福建省泉州市恵安県で小学生2人が登校しておらず、保護者に連絡してもいつも通りに朝早く家を出たという。小学生の2人がどこかへ消え失せてしまったのだ。現地の警官が学校や道路などに設置された監視カメラを確認したところ、通学路では2人が登校する様子を確認できず、どうやら学校には来ていないことが明らかになった。そこで、2人の住む集合住宅を調べると動かなくなっていたエレベーターを発見。2人はそこに閉じ込められていたのだという。住宅地の公共空間に監視カメラを設置すれば、いざというときに子供の様子を確認できるようになるだろう。

 報道機関に掲載されている意見を見る限り、以前は学生の個人情報を考慮すべきという慎重な意見があった。しかし、最近では、中央政府の方針で決まったこともあり、ほぼ全員が歓迎しているという論調になっている。学校の監視カメラがハッキングされるという事件もあるが、それは適切な管理体制を敷いていない学校側の問題とみなされ、前向きな考えは揺るがない。

 前述した通り、教育部の発表は監視カメラを導入していない学校への最後通告であり、既に多くの学校が導入している。そのため、確かに学校内のさまざまなトラブルが解決し、いじめも減少している。その一方で、個人のプライバシーを考慮して、トイレや学生寮などには設置されていないことから、そこでのいじめが問題として報じられている。報道による悪影響を考えて、学校側は事後を明らかにしないし、報道機関も積極的に追いかけない。中国政府もいじめの解決に向けて対処するよう学校に通知するが、その内容は問題が起きたときの責任をはっきりさせようとするものであり、ITを使ってどうにかしようというものではない。

 監視社会と言われる中国においても、子供はその隙間をかいくぐっていじめを行うのだ。何も子供だけではない。教師が監視カメラの死角に学生を引っ張り込み、そこで体罰を与える様子が報じられたこともある。

 ある企業は、監視カメラの映像から複数の顔を同時に認識し、7種類の感情と21種類の表情を判別する人工知能(AI)システムを開発。学生の在席管理や集中力分析などに生かしている。また、生体データや位置情報を記録するチップが縫い付けられたスマート制服を開発している企業もある。実験的に導入する学校もあるが、プライバシーの観点から保護者の反発を買い、短期間で終わるケースも少なくない。だが、中央政府が導入を推進すれば、歓迎一色の報道になるだろう。

 結局、学校での監視体制が強まると、教師も学生も模範的な態度が求められ、それがストレスになる一方で、いじめ問題に対してはある程度の効果が見込めるものの完全な対策とは言えない。

山谷剛史(やまや・たけし)
フリーランスライター
2002年から中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、ASEANのITや消費トレンドをIT系メディア、経済系メディア、トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に『日本人が知らない中国ネットトレンド2014』『新しい中国人 ネットで団結する若者たち』など。

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