契約書の適切な管理運用で競争力強化-- LegalForceが考える「DXはバックオフィスから」

河部恭紀 (編集部)

2021-12-10 07:40

 企業のDXはSaaSを使ってバックオフィスから進めるのが良く、契約書の適切な管理・運用により事業競争力を強化できる。契約管理システム「LegalForceキャビネ」を提供するLegalForceは12月1日、「スタートアップが支える企業のバックオフィスDX」と題して記者説明会を開催して述べた。

 まず、同社で代表取締役最高経営責任者(CEO)を務める角田望氏は、デジタルトランスフォーメーション(DX)について、アナログ・物理データのデジタルデータ化(デジタイセーション)や個別の業務・製造プロセスのデジタル化(デジタライゼーション)をした上でのビジネスモデルや事業の変革までを含めたものと定義し、単なるデータ化ではないと説明した。

 DXはコロナ禍を受けて企業で進んだように思われるが、同社が実施した調査では77%が「DXが進んでいない」と回答していることが分かっている。DXが進まない理由としては、「推進者の不在」が34%で、次いで「予算不足」が28%だった。

 推進者の不在についてさらに詳しく調べると、ITスキルや知見を持った適切な人材がいない、DXの必要性を感じていないという回答が挙がっているという。「経営陣がDXの必要性を感じていない場合、担当者を選任するということをしない。そうすると推進者がいない、進展がない、抽象的な話で終わる」(角田氏)

 このような課題があるが、Software as a Service(SaaS)の活用によってDXが推進されると角田氏は述べる。その理由の1つとして、コストがある。従来のオンプレミスのシステムでは、構築に加えて運用・保守に大きなコストを必要とする。業務プロセスも減価償却期間はシステム導入時のビジネスモデルに縛られることになる。SaaSでは、開発や運用のコストを抑えながら新しいテクノロジーを取り入れ、業務プロセスを改善することが可能になる。

 2つ目の理由として、自社でのサーバー管理が不要になるため、メンテナンスや障害に対応するエンジニアが社内に必ずしも求められないことがある。3つ目の理由として、クラウドに保存された情報へアクセスするため、在宅でも仕事を進められることがある。

 SaaSを活用したDXの推進は、財務、経理、法務、総務といったバックオフィスから進めるべきだと角田氏は考える。バックオフィスの場合、生産性の向上、品質向上、内部統制の強化、データの蓄積/共有の実現により、業務が本質的に変わり、効果が分かりやすいという。

 バックオフィスの業務は、企業の規模によって変わることがあっても、同一カテゴリーの企業ではオペレーションに差がないため、SaaS側で用意しているベストプラクティスを導入すれば、カスタマイズの必要性も少ない。

 さらに、バックオフィスの場合、管理部門の判断でソリューションの導入を推進しやすいという傾向がある。交通費精算、勤怠管理、給与明細というようにあらゆる社員を対象とするため、全社的な効果を得やすい。これを成功体験に経営陣も次の領域でDXを進めることが容易になるという。

 このようなバックオフィス業務の1つで、LegalForceが注力している契約領域は、ビジネスの根幹をなしていると角田氏。事業は、人を雇うことで役務を提供してもらう、製品を提供することで利益を得る、というような価値の交換の集合体であり、価値の交換により権利や義務が発生する。権利や義務の発生が契約であり、全てのビジネスは契約の積み重ねで成立しているという。

 バックオフィス業務も同様で、例えば、経理・財務部門の支払いは契約に基づいている必要がある。人事・総務・労務 法務部門は契約に基づいて労務管理をする。法務部門は、契約書をチェックするのはもちろんのこと、契約上の義務に違反していないかを把握し、リスクのある契約があれば見直すなどして契約を管理する。契約はバックオフィス業務に携わる部門で都度参照され、企業の管理体制を形作るのに重要となるという。

 その一方で、多くの企業では契約書の管理ができていないと角田氏は指摘する。約9割の企業は、契約書を書面で保管している、PDF化して共有フォルダーで保管しているのが現状だという。

図1

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