2022年はデジタルレジリエンシーが必須に--IDC Japanが国内IT市場を予測

藤本京子

2021-12-15 09:00

 IDC Japanは12月14日、2022年の国内IT市場の予測を発表、その内容について説明会を開催した。

 まずIDC Japan リサーチバイスプレジデントの寄藤幸治氏は、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行(パンデミック)を、過去に金融危機をもたらしたリーマンショックと比較。「リーマンショック時の2009年の国内IT支出は、国内総生産(GDP)の成長率よりも大きく落ち込んだが、今回のパンデミックでは、2020年に支出が減速したもののGDP成長率の落ち込みほとではなく、2021年には成長率もプラスとなるなど回復も早かった」と解説した。

 2022年については、「IT市場全体の成長率は微増にとどまるが、分野によっては大きく成長する」とし、第5世代移動体通信システム(5G)などのネットワーク機器、Infrastructure as a Service(IaaS)、ソフトウェア全般(Software as a Service〈SaaS〉、Platform as a Service〈PaaS〉、人工知能〈AI〉や分析などのアプリケーション開発、システムインフラソフトウェアも含む)、デジタル関連のビジネスコンサルティングといった分野で高い成長が見込めるとした。

 中でも、「サステナビリティー、ビジネス環境変化適応、現場のエンパワーメントに向けたデジタルファーストの姿勢が企業間で強まるだろう」と寄藤氏は話す。また、外部環境の変化にデジタル技術で対応し、その環境変化を新たな成長の糧にできるような能力が必要だとし、そのような能力を「デジタルレジリエンシー」と定義。これが企業にとって必須の経営事項だとした。

 また、2022年は「多様化するデータやインフラストラクチャーのレジリエンシーを向上するため、デジタルインフラストラクチャーへの変革が本格化する」と寄藤氏。その際に考慮すべきポイントとして、デジタルインフラストラクチャーでもレジリエンシーと信頼性を高めることが重要であることから、サイバー攻撃への対応やインフラのサステナビリティー、スケーラビリティーなどを考慮する必要があること、また分散したデータや運用の複雑性にも対応すること、投資が成果に結びつくようインテリジェントな自動化システムの導入を検討することなどを挙げた。

 次に寄藤氏は、顧客と従業員のエンゲージメントについて言及。顧客とのエンゲージメントは、法人向け事業(BtoB)、消費者向け事業(BtoC)の双方で対面と非対面のハイブリッドな手法が今後も定着するとしている。同時に従業員エンゲージメントも、業務ツールをクラウドに移行し、場所を問わず同一のエクスペリエンスが得られるワークスペース環境が整備されていくと寄藤氏は述べ、「デジタル変革〈DX〉に熱心な企業は、どのようなワークモデルが従業員に最適かを考えている。それが新しい働き方や、新しい顧客との関わり方につながっていく」と述べた。

 顧客体験については、「パーソナライズされた顧客体験をオムニチャネルで提供するため、動的な顧客理解の拡大に向けた顧客データ基盤(CDP)の構築が進むだろう」と寄藤氏は言う。パンデミックによって消費者やビジネスバイヤーとの接点が変化し、どの接点でも同じ体験ができるボーダーレス化が進んでいると寄藤氏は指摘、「ボーダーレス化が進むと、機能や価格は差別化要因にならず、企業の発するメッセージにどう共感してもらうかがブランドの価値につながる」と話す。そのため、「あらゆる顧客接点で体験を向上させる必要がある」と同氏は述べ、顧客データをリアルタイムに活用できるCDPが不可欠になるとした。

 さらに寄藤氏は、ネットワーク分野についても触れ、2022年は「企業活動の分散化に対応しながら、ワイヤレス主導とクラウドドリブンなネットワークを目指し、企業ネットワークと運用の最適化に向けた検討が進む」と語る。今後は従業員全員にモバイルネットワークを付与する企業も増加するほか、Software Defined-Wide Area Network(SD-WAN)の利用目的がローカルブレークアウトの実現から、トラフィック変動への対応やパブリッククラウド、拠点、データセンターを包含した拡張的で仮想的な閉域網の構築にも拡大すると寄藤氏。また、ネットワークの運用管理にはAIの導入が増え、自律的で可用性の高いネットワーク運用が実現するようになるだろうとしている。

 最後に寄藤氏は、「多くの企業がアフターコロナについて考え始めている。ハイブリッド、自動化、データ活用など、課題はさまざまで、どれが最適な働き方につながるか、顧客との最適な関わり方につながるかを検討している段階だ。その答えは企業によって異なるが、従業員や顧客が一貫したエクスペリエンスの得られる新しいビジネスモデルを求めていることは確かで、2022年はこうした課題をベンダーやコンサルティング企業がサポートすることになるだろう」と述べた。

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