日本ゼオンは、特許などの知的財産(IP)分析を経営判断に生かしていくために、人工知能(AI)を活用した「技術動向予兆分析システム」の稼動を開始した。日本IBMが12月14日に発表した。
このシステムは、AIを搭載した文書検索システム「IBM Watson Discovery」を活用している。日本ゼオンでは、同システムを用いて10万件以上の大規模で複雑な特許データを効率よく網羅的に解析していく。これにより、移り変わる市場や需要、技術トレンドの予兆を的確かつ迅速に捉え、持続可能な社会に貢献し続けるためのものづくりにつながるアイデアを導き出していく。
Watson Discoveryは、自然言語処理(NLP)技術を使って文書、ウェブページなどのビッグデータからビジネスの意思決定に有益な洞察を提供する。これにより、調査時間を大幅に削減できるとしている。IBM Researchによって開発されたNLP拡張機能では、ビジネスユーザーが高度なデータサイエンススキルを有していなくても、大量かつ複雑な業界特有の文書を読み込んで理解し、より的確な洞察を可視化できるという。
システム概要
日本ゼオンでは、燃料や原料双方における化学資源からの脱却や脱炭素戦略を盛り込んだ持続可能な社会に貢献し続けることへの転換を図るため、競争力の源泉となる研究開発での時流や目的にあった技術動向の予兆分析が喫緊の課題となっていた。そこで適切で質の高いテーマ創出に注力していくため、特許などの知的財産分析を企業の経営判断に生かすIPランドスケープの確立を推進してきた。
今回、日本ゼオンと日本IBMは、IPランドスケープの実現を加速させるため、特許をはじめとした知財に関わる領域のデジタル変革(DX)を進めることで合意した。IBMのコンサルタントや専門家が分析環境を整え、相関値を活用した相関分析やトレンド分析などといった分析アプローチをWatson Discoveryで提供する。
日本ゼオンでは、分析者による技術動向のトレンド把握や自社技術との関連性といった、新しい洞察の入手が可能となり、さらに知財領域の専門かつ固有の表現や単語分析には、同社のテキスト化された独自の辞書データを活用することで、テーラーメードの分析が可能となる。今回、特に分析軸としてトレンド分析を利用し、技術や研究領域の動向や最新の研究結果を可視化することで、新たな事業展開マーケットの割り出しや、同社の技術と親和性の高い特許の発見が期待される。
今後、日本ゼオンでは、同システムを活用することで分析結果を基に研究開発領域の潜在的なニーズを把握するとともに、合併買収に向けたデューデリジェンスなどユースケースの幅を拡大し展開していく。