シスコシステムズは12月15日、パナソニックと共同で放送事業者のIP化技術支援を目的としたデモ/開発環境を構築し、運用を開始したと発表した。第5世代移動体通信システム(5G)を用いたエンドツーエンドのネットワーク環境で実証実験が可能な検証設備「5Gショーケース」内に設置されている。
この実験環境は、放送事業者のIP化対応に向けて幅広い対応機器やソフトウェアを使用して接続互換性の検証やデモ、実証実験、新しい対応機材やソフトウェアの開発を行うための環境として、パナソニックのライブ映像制作プラットフォーム「KAIROS」と、シリアルデジタルインターフェース(SDI)からIPへの移行を実現するシスコの「CISCO IP Fabric for Media」を組み合わせて構築している。
放送事業者向け環境をパナソニックと共同で構築
シスコシステムズ 専務執行役員 情報通信産業事業統括の濱田義之氏は、「放送のIP化についてはこれまでも議論されてきたが、5Gを使ったリモートプロダクションなど、IP化とともに放送業界における新たな価値創造の可能性が出てくのではないかと考えている」と語り、放送のIP化と5Gの組み合わせについて意義を強調した。
また、同氏は「5G元年」と言われた2020年から現在までを振り返り、5Gショーケースの取り組みに加えてソフトバンク、楽天モバイル、KDDI、NTT東日本などのサービスプロバイダーと連携し、各社の5Gインフラの構築に貢献してきたことを紹介。同社のサービスプロバイダー向けルーターの市場シェアが直近で77.0%に達していることも明かした。
日本におけるサービスプロバイダー事業の状況
5G市場の現状について、濱田氏は「一般ユーザー向けに普及していくフェーズ」としつつ、サービスプロバイダーは一般ユーザーにとどまらず、企業や産業での利用促進に取り組んでいると指摘した。現状、サービスプロバイダーのモバイル収入は消費者が8割超を占めるが、2025年には企業やIoTでの利用が5割超になるとの予測を示し、同社もこうした取り組みを支援していくとした。
サービスプロバイダー向けの事業戦略として、具体的には「コア技術の継続的なイノベーション」に注力しつつ、「コンポーネントの技術革新および提供」と「デジタル通信事業者向け付加価値サービス」を強化していくとした。
サービスプロバイダー向け事業戦略
続いて、同社 執行役員 サービスプロバイダーアーキテクチャ事業担当の高橋敦氏が5G技術の開発戦略について説明した。高橋氏はまず、重点開発領域として「5Gコア」「5G IoTサービス」「5Gプライベートネットワーク」「固定無線アクセス(Fixed Wireless Access)」の4つを挙げた。
5Gコアに関しては、モバイルコアの開発に引き続き投資していくとともに、「1つのコアで複数の世代を収容できるConverged Coreの開発を進めている」とした。5G IoTに関しては「2016年に買収したJasper Technologiesの基盤を拡張して世界最大規模のIoTプラットフォームをモバイルポートフォリオとして有している」とし、5Gプライベートネットワークでは「シンプル、セキュア、シームレスな5Gプライベートネットワークを展開するためのソリューション開発に注力」していると説明した。
また、サステナビリティー関連の取り組みについても言及し、「再生可能エネルギーの利用加速」「循環型経済の推進」「革新的な製品開発」といった取り組みを通じて、2040年に温室効果ガスの排出実質ゼロを目指すとした。
最後に、同社 情報通信産業事業統括 SEマネージャーの山田欣樹氏が、2020年11月の開設から約1年がたった5Gショーケースの最新状況を説明した。まず、開設時点で予定されていたローカル5Gの免許取得が完了し、ミリ波とSub6の2種類の電波について商用免許を取得したことが発表された。また、デモやユースケースの拡充、パートナーの参画など、順調に発展している状況が示され、パナソニックと共同で構築された放送事業者向け環境やNECとのローカル5G分野での協業拡大などについても紹介された。
順調に発展していることが紹介され、パナソニックと共同で構築された放送事業者向け環境や、NECとのローカル5G(私設型5G)分野での協業拡大などについても紹介された。
5Gショーケースがローカル5G商用免許を取得