ビルのDXでサステナビリティーを推進--ジョンソンコントロールズが事業戦略

國谷武史 (編集部)

2022-01-05 06:00

 ビルシステムを手がけるジョンソンコントロールズは、2022事業年度の事業戦略を発表した。記者会見した代表取締役社長の吉田浩氏は、ビル建物のデジタルトランスフォーメーション(DX)を通じて、顧客のビジネスにおけるサステナビリティー(持続性)を推進したいと表明した。

ジョンソンコントロールズ 代表取締役社長の吉田浩氏
ジョンソンコントロールズ 代表取締役社長の吉田浩氏

 吉田氏は、事業戦略の背景として、地球温暖化の一因とされる二酸化炭素の排出についてビルから排出される二酸化炭素の割合も高く、世界的に二酸化炭素の排出抑制によるサステナビリティーへの取り組みが重要テーマになっていると述べた。これにも関連してスマートシティーなどの取り組みではビルにまつわるビッグデータの活用が期待されていること、コロナ禍におけるビル施設での人流の把握や効果的な空調の実施などの必要性、さらにはビル自体の災害対策やサイバーセキュリティ対策なども課題になっていると説明した。

 同氏によれば、こうした背景からビルに求められる価値にも変化が生じている。従来は土地の価格や建造物のコストに重きが置かれたが、現在では建物自体の価値やその活用によって継続的に生みされる付加価値に置かれるようになった。そのためのテクノロジーやソリューションの重要性が増しているとする。

 このため戦略では、(1)先進テクノロジーを活用したビルのDXとサステナビリティーの実現、(2)日本での50年の事業実績を通じた価値提供、(3)建設業界における人材不足などの課題への対応――の3つを柱に位置付ける。

2022事業年度の戦略概要
2022事業年度の戦略概要

 (1)では、最高経営責任者(CEO)のGeorge R. Oliver氏が11月に開催された「気候変動に関する国際連合枠組条約」の第26回会議(COP26)に参加するなど、近年にグローバルでの環境対策に取り組んでおり、研究開発では予算の多くをサステナビリティーやデジタルサービス分野に投じてきたという。

 2020年には、ビル管理に関するデジタルソリューションプラットフォームの「OpenBlue」を構築し、ビル経営情報を提供する「OpenBlue Enterprise Manager」や、人工知能(AI)を用いた熱源機器などのリモート管理を行う「OpenBlue Central Utility Plant」などのアプリケーションやサービスの展開を開始した。吉田氏は、各種メーカーのビル関連システムやビッグデータを統合、活用してビルオーナーなどの顧客に包括的なサービスを提供するとの位置付けを紹介した。

「OpenBlue」プラットフォームの概要
「OpenBlue」プラットフォームの概要

 海外ではヘルスケア企業における冷却水循環装置(チラー)のリモートメンテナンスへの導入でコストを50%削減するなどの実績が出始めており、2022年事業年度にはこうした事例を中心に国内での訴求を本格化させ、サービス型のビジネスモデルとして注力していくとした。既に大手の電力企業グループで導入検証が行われているという。

 (2)では、日本での長年の事業実績とグローバル企業としての強みを発揮していくとする。ビルの多様な価値創出に向けてITベンダーや建築関連企業らとのエコシステムの拡充を進めるほか、OpenBlueなどグローバル展開するサービスの導入提案を強化する。2022年中にビルオートメーション製品「Metasys」でサイバーセキュリティ機能やITネットワークへの対応を強化するほか、大手クラウドサービス事業者の利用が拡大している国内データセンター事業者のサポートも強化していくとしている。

エコシステムパートナーとの取り組み
エコシステムパートナーとの取り組み

 (3)では、国内建設業界における労働人口の減少が今後急速に進行するといった予測があるという。そこでAIを活用した予防保全技術の利用拡大などを通じて属人的な業務の自動化を図り、顧客企業の人材がより集中すべき業務に専念できるなどの支援に取り組む。また同社内でも安全や倫理に関する啓発を通じてより意識の高い業務を遂行していく取り組みを進めるほか、社員の評価の透明性向上やダイバーシティーへの取り組みなどを推進していくとした。

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