米国の量子コンピューター企業Rigetti Computingは米国時間12月15日、次世代量子コンピューター「Aspen-M」を発表した。これは、2基の40キュービットプロセッサーを接続した80キュービットの量子コンピューターだ。
Aspen-Mは、大規模量子コンピューターの実現に向けて特に力を注いでいる同社最新の成果であり、現在はプライベートベータ版として提供されている。
Rigettiは複数の量子コンピュータープロセッサーを搭載したシステムを追求している。同社は6月に、そうしたシステムを「Quantum Cloud Services」(QCS)プラットフォームを通じて提供していく計画だと発表していた。
同社は単一の量子プロセッサーの性能を高めるアプローチではなく、小規模なチップを連携させてモジュラー型のプロセッサーを作り上げ、キュービット数を増やすアプローチを採用している。キュービットとは、従来型のコンピューターでは0か1を表現するビット(2進桁)の量子コンピューター版であり、0と1の双方、あるいはそれら状態の間の任意の組み合わせを重ね合わせた状態として保持できる。
またRigettiは、単一の40キュービットプロセッサーに基づく新たなシステム「Aspen」の一般提供を開始したとも発表した。これは、同社のQCSや、Strangeworksのエコシステム、Amazon Web Services(AWS)が提供しているマネージド型量子コンピューティングサービスの「Amazon Braket」上で利用できる。
Rigettiは、Aspenの超伝導プロセッサーによってスケーラビリティーや速度、精度が向上し、同社の既存システムよりも2.5倍高速に量子処理が実行できるようになると主張している。また、読み取り時の誤りを最大50%低減できることで、量子プログラムの結果の信頼性が向上するとも主張している。
Rigettiの創業者であり最高経営責任者(CEO)でもあるChad Rigetti氏は、「われわれのマシンは、重要性の高いアプリケーションを支える、現実世界のデータセットを処理できるだけの規模と速度に達した」と述べるとともに、「われわれは、これらのシステムが研究者や企業にとって、現実の問題での量子優位性を追求していくための最適なプラットフォームになると確信している」と述べた。
またRigettiは、キュービットに第3の状態を追加し、「キュートリット」を実現したとも発表した。キュートリットによって、単一素子上により多くの情報をコード化し、読み取り時の誤りを低減できるようになる。Rigettiは現在、同社の「Quil-T」サービスを通じてキュートリットへの実験的なアクセスを提供している。
同社は声明に、「キュービットに状態を1つ追加し、キュートリットにすることで、単一素子上にコード化される情報の量を増やせるだけでなく、読み取り時の誤りを劇的に低減できる技術も利用可能になる」と記している。
さらに同社は「われわれのプロセッサー上での第3の状態へのアクセスは、量子コンピューティングや量子物理学の最先端を探求している研究者や、従来のキュービットに基づくアルゴリズムに興味を抱いている人々などにとって有益なものになるだろう」と記している。
IBMやMicrosoft、Googleなど、量子コンピューター分野の大手企業は、量子コンピューティングを活用できる新たな応用事例を見つけ出すために、コンサルティング企業や製薬業界の企業などと提携を結んできている。
RigettiはDeloitteやStrangeworksと提携し、同社の新たなプロセッサーを用いた物質シミュレーションや最適化、機械学習(ML)に取り組んでいくと述べた。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。