米国で「Cバンド」周波数帯を活用した5Gサービスの導入について、企業や連邦規制当局から賛否の声が相次ぎ、緊張が高まっている。今回、航空機メーカーのBoeingとAirbusもその論争に加わった。
Cバンド5Gサービスの導入をめぐる議論は、米連邦通信委員会(FCC)と米連邦航空局(FAA)の対立から始まった。FCCは通信事業者によるCバンドの利用を承認したが、FAAは、特定の空域で5Gデバイスを使用することで、多くの航空機が自動着陸を可能にするために利用している高度計が干渉を受けるとして反対を表明した。
無線通信業界団体のCTIAは、公開した文書の中で、世界で多くの国が、航空機器に有害な干渉を及ぼすことなくCバンド5Gサービスを導入していることが分かるとしている。文書は、CTIAが開設した、5G導入の安全性を示すウェブサイトに投稿されている。
AT&TとVerizonは、サービスの導入をめぐる対立やFAAが反対していることを考慮し、計画していた5G導入を延期している。FCCとCTIAは現在も、Cバンドの利用は航空システムにも安全だとする考えを曲げていない。
FAAは支持を広げているようだ。Reutersによると、Boeingの最高経営責任者(CEO)Dave Calhoun氏とAirbus AmericasのCEOであるJeffrey Knittel氏は、米運輸省のPete Buttigieg長官に宛てた共同書簡で、Biden政権に対し、関係する通信事業者の5G導入延期を支持するよう強く求めた。
両氏は、業界団体Airlines for America(A4A)の分析を引用し、2019年にFAAによる5Gの方針が実施されていたら、旅客機34万5000便、貨物機5400便が、遅延や目的地変更、欠航に直面していた可能性があることが分かったとしている。
この議論では、明らかに検討されるべき課題が複数あるが、関係する規制当局や企業は手詰まりの状態のようだ。AT&TとVerizonはCバンド5Gサービスの展開を米国時間1月5日まで延期している。それまでに円満な合意に達する見込みはますます薄くなっている。現時点で、AT&TとVerizonはFAAが懸念する中で計画を進めるのか、両規制当局がこの問題について詳細に議論できるようにするのかは明らかではない。
いずれにせよ、Reutersが指摘する通り、Cバンドの導入でメリットを得られる可能性のあるパイロット、乗客、将来の5Gユーザーは板挟みの状態となりそうだ。Reutersによると、Air Line Pilots Associationの広報担当者は、議論が続くことは「乗客、運送会社、そして米国経済にとって大きな問題」だと述べている。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。