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JBCCが「クラウド」「セキュリティ」「超高速開発」で事業構造を転換する理由

田中克己

2022-01-04 07:00

 中堅企業向けにシステムの開発と販売を手がけるJBCCホールディングスが事業構造の改革を急いでいる。事業の安定した成長を実現するためで、フロー型からストック型のビジネスにシフトさせる。アジャイル開発を取り入れることでプロジェクトの開発期間を半分にする取り組みも進める。クラウド、セキュリティ、超高速開発の3つに経営資源を集中し、2021年4月にスタートした中期経営計画では2023年度(2024年3月期)に売上高600億円、営業利益33億円を目指す。

 代表取締役社長の東上征司氏は「着実に成長している企業は、クラウドなどのストック型ビジネスを推進している。フロー型ビジネスは、投資が冷え込むとサーバーが売れなくなるなど事業の浮き沈みがある」と語り、クラウドとセキュリティといったストック型ビジネスの比重を高めていくとする。

 実際、2021年度上期のクラウド事業の売り上げは前年同期比約50%増、新規受注高は同86%増と大きく伸びている。セキュリティ事業も同じく売り上げが35%増、新規受注高が78%増となる。東上氏によると、クラウドとセキュリティの新規受注高を合計すると、2022年度に約30億円のビジネス規模になるという。しかも年率50%の成長を見込む。セキュリティやクラウドの導入・運用に関連した自社開発サービスを他社に販売するビジネスも加わる。クラウドセキュリティの設定監査サービスをOEM提供した例もある。

 一方、超高速開発はシステムインテグレーション(SI)の在り方を変えるものになる。ローコード開発ツール(ウルグアイの「GeneXus」)を使ったアジャイル開発によって開発スピードを大幅に向上させる。8年前に始めた超高速開発の適用実績は約400になる。SIの平均利益率は約30%と言われるが、従来型SIが20%台なのに対して、アジャイル開発は約40%になるという。基幹系システムの再構築に適用した事例は3分の1を占め、東上氏は「他社にはない」と自慢する。

JBCCホールディングス 代表取締役社長の東上征司氏
JBCCホールディングス 代表取締役社長の東上征司氏

 アジャイル開発を推進する背景には、SIの不採算プロジェクトにある。多くのシステムインテグレーター(SIer)が毎年数%の赤字案件を抱え、利益を下げているのは誰もが知るところ。「このまま放置すれば、顧客の信頼を落とし、ビジネスを伸ばせない」(東上氏)と判断し、あるユーザー企業にアジャイル開発の適用を提案し、了承を得た。

 東上氏は「約束通りの期日と品質でカットオバーさせた。想像を上回る品質だった」と振り返る。そこでさらに約10件の案件を追加し、生産性の向上を確認。SIの開発手法をアジャイル開発に変えることを決断した。それが約6年前のことだ。

 JBCCでは、基幹系システムのアジャイル開発に工夫を凝らしている。ウォータフォール型以上に要件定義に時間をかけることだ。「業務に合わないなど、ユーザーの不満が募っているので、それを解消させる」(東上氏)ためだ。しかも、要件を最小単位に小分けし、その塊を一つ一つ順番にアジャイル型で開発していく。つまり、ウォータフォール型とアジャイル型とのハイブリッドになる。

 既にSI全体の5割超にアジャイル開発を適用しているが、2023年度には7割に高める計画。残っているのは、メインフレームやオフコンの入れ替えや電子カルテなどになる。東上社長によると、開発期間は他社の半分になるという。ある大学受験予備校の基幹系システム(大学受験判定システム)の作り直しでは、大手ITベンダーの提示した4年に対して、JBCCは1年半の開発期間を提案し、案件を獲得した。もちろん予定通りに稼働させたが、「後で聞いたのだが、理事長は眉唾と思っていたそうだ」(東上氏)

 2021年10月には「超高速開発センター」を新設し、さらなる開発生産性の向上に取り組む。その一つは“工場化”だ。要件定義、開発、テスト、リリースの各工程を、担当別に専業化させていく。ローコード開発ツールではソースコードが自動生成されるため、アセットとして再利用しやすい。これによって“部品化”も進める。

 「システムエンジニア(SE)は自分が作るプログラムが優れていると思っている。しかし、GeneXusのアセットを活用することで開発の品質や生産性を向上し、利益率も高められる」(東上氏)

 システム開発に必要な費用も人月による工数ではなく、開発する機能とその数などから提示する。東上氏は「(従来型に比べて)平均で半分の費用になる」と語る。

 実のところ、2023年度の売上目標である600億円は、2020年度の実績と同じなのだ。ただし、2020年度には売却した研修事業を展開するアイラーニングの売上高16億円弱が含まれている。しかも、クラウド化によるシステム販売の売り上げが減少している。つまり、事業構造転換によって、実質の売り上げが増え、2023年度の営業利益(目標)も2020年度比で6億円増の33億円とする。

田中 克己
IT産業ジャーナリスト
日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任、2010年1月からフリーのITジャーナリスト。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。12年10月からITビジネス研究会代表幹事も務める。35年にわたりIT産業の動向をウォッチし、主な著書は「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路」(日経BP社)、「ニッポンのIT企業」(ITmedia、電子書籍)、「2020年 ITがひろげる未来の可能性」(日経BPコンサルティング、監修)。

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