12月10日にオンラインで開催されたウェビナー「ZDNet Japan Summit 2021 Digital Enterprise Now & Future 変革するビジネスとテクノロジーの真実」で、SESSION3に登壇したのは株式会社Retail AI 代表取締役社長の永田洋幸氏。同セッションでは、同社がグループ内外の小売店で展開している“セルフレジ内蔵”の「スマートショッピングカート」の概要、それによる顧客体験の変化、サプライチェーンの変革について解説した。
約5300台ものスマートショッピングカートが稼働中
全国270店舗に及ぶスーパーセンター(食料品や衣料品、住居関連商品を一つのフロアに集めた業態)を構えるトライアルグループ。それらの店舗をテクノロジーの側面で支えているのが、グループ会社のRetail AIだ。「テクノロジーによって、新時代の買い物体験を生み出し、流通の仕組みを革新する」をビジョンに掲げる同社は、スマートショッピングカート、人工知能(AI)を活用したカメラ、AI冷蔵ショーケースといったIoTデバイスを開発・活用してデータを分析することで、小売や流通のデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めている。
永田氏は、そうした「新時代の買い物体験」を実現する鍵といえるIoTデバイスのうち、スマートショッピングカートについて詳しく紹介した。2021年11月時点でトライアルグループの51店舗において約5300台が稼働し、2021年中には他社の3店舗を含む63店舗6500台へと導入拡大を見込んでいる。そこでポイントとなるのは、「決済」と「パーソナライズ顧客体験(CX)」だ。
レジ作業を削減し、データとAIで「パーソナライズCX」を実現
スマートショッピングカートは、買い物カゴをセットする手押し型のカートに、タブレット端末とバーコードスキャナーが取り付けられたもの。来店客は購入したい商品を棚から手に取り、バーコードスキャナーにかざしてカートに入れていくだけで、最終的にその端末が決済までこなし、レジ係を通さずに買い物できる仕組みとなっている。いわばセルフレジ機能が内蔵されたショッピングカートというわけだ。
買い物をしている最中でも合計金額を画面上で確認でき、キャッシュレスによる支払いに対応する。労働力不足や非接触による感染症の対策にもなる。こうした「決済」に関するメリットに加え、ポイントカードを読み取って来店客個人の購買データを参照し、AIによる分析を行うことで、その人に合った適切なサービスを提供する「パーソナライズCX」にもつながる。
例えば、「お酒が飲めないお客さまにお酒のクーポンを出しても、誰も喜ばない」と永田氏。スマートショッピングカートを活用すると、来店客の購買データから最も興味のありそうなクーポンを、買い物中に欲しいと想定されるタイミングで発行できる。スマートショッピングカートで顧客に関するデータを確実に収集・分析しているからこそ、こうした新しい買い物体験を生み出すことが可能になっているといえるだろう。