新潮流Device as a Serviceの世界

PC運用のDX--APIとAPIエコノミーの正体を知る

松尾太輔 (横河レンタ・リース)

2022-01-13 06:00

 近年、クラウドを中心に利用が進むサービスは、Application Programming Interface(API)の塊です。

 当たり前ですが、クラウドサービスはインターネットを通じて提供されます。不特定多数の人がいつ、どこから利用するか分かりません。そのためクラウドサービスは、24時間、常に稼働していることが求められます。クラウドサービスが機能一つひとつを独立したシステムとして構成する、いわゆるマイクロサービスアーキテクチャーという考え方で開発されることが多いのは、そのためです。

 こうすることで機能の一つがメンテナンスや障害、アップデートで停止しても、全体の動作に影響を与えることなく、安定的なサービス提供を可能にしています。この機能(システム)をつなぐのが、APIです。必然的にクラウドサービスは、APIの塊となるわけです。ここまでが前回のお話でした。今回は、このAPIが生み出す新しい経済圏、「API Economy(APIエコノミー)」についてです。Toil削減に重きを置いたDevice as a Service導入ポイントのキーワードその1「API」の続きとなります。

 繰り返しになりますが、クラウドサービスはAPIの塊です。一つひとつの機能が独立したシステムとして構成され、そのシステム間が全てAPIで連携します。独立したシステムですから、それが一つのクラウドサービスの中からAPIで連携しようが、外部のクラウドサービスから連携しようが関係ありません。これは、他のクラウドサービスとの連携が容易なことを意味します。

 自社のクラウドサービスに足りないところがあり、他社のクラウドサービスがその機能を有していた場合、その機能をAPIで補うことが可能です。もちろん、勝手に使うわけにはいきません。セキュリティの問題もありますが、利権の問題もあります。他社もクラウドサービスを提供しているからには、商売をしようと思っています。無料で使えるものもありますが、何らかのルールが課されるものです。いたずらに競合他社の足りない部分を補いたいというクラウドサービスベンダーはいないでしょう。そのクラウドサービス自体のビジネスを活性化するようなAPI連携が望まれます。それは、Win-Winの関係ということです。

 例えば、あなたが中古オークションサイトを立ち上げたとしましょう。売りたいという人と買いたいという人をマッチングするサービスです。売りたい人と買いたい人の間でさまざまなやりとりが発生します。価格交渉をするためには、チャット機能が必要です。モノのやりとりも発生します。売りたい人からモノを引き取り、買いたい人へ配送する必要があります。これらのチャット機能や、配送機能を全て自社でそろえて開発することは大変です。引き取り・配送については、実際のモノを取り扱うサービスです。クラウドサービスだけでは完結せず、クラウドサービスからリアル世界のサービスにつなげる必要があります。

 そこでAPI連携です。チャット機能だったら、それ単独のクラウドサービスが存在しています。引き取り・配送についても、宅配事業者が提供しているクラウドサービスがあります。普段であれば、モノを送りたい人が宅配事業者のクラウドサービスにアクセスしてからモノの引き取りや配送を依頼します。その機能を中古オークションサイトからAPIで連携して利用するわけです。商談がまとまったら、売った人へ引き取りを手配します。引き取った後、買った人へ配送します。

 このようにAPIを利用する側としては、自分たちのサービスを補いつつ、利用される側としては自社のサービスがより多くの人に利用されて、ひいてはビジネスの拡大につながる、これがAPI Economyと呼ばれるクラウド時代の新しい経済圏なのです。これにより、基本的な機能を自社で全く作る必要がなく、新しいサービスを素早く立ち上げることも可能になります。

 その好例として、よく挙げられるのがUberです。Uberは、ご存じのとおり移動したい人と移動のためのリソースを持て余している人(車とドライバーの時間)をマッチングするサービスです。ドライバーと依頼主の通話やショートメッセージサービスのやりとりにはTwilioというクラウドのコミュニケーションサービスを、乗車位置の指定や目的地までの案内にはGoogle Map、決裁にはBraintreeという風に、最低限必要な機能を他社のクラウドサービスとAPI連携することで実現し、素早くサービスを立ち上げ、瞬く間に世界に広がりました。

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