IBMは、クレムソン大学のCooperative Extension Service(協同普及事業)、The Linux FoundationのプロジェクトAgStack Foundationと協力し、農家が持続可能な方法で作物を育て、気候変動の影響に対応できるようにするための詳細なデータを提供しようと取り組んでいる。
IBMの開発者は、同社の「Call For Code」プログラムを通じて、クレムソン大学の研究者らと協業を開始した。このプログラムは、社会的な課題を解決するための革新的な技術ソリューションの開発に取り組む世界中の人々を支援するものだ。
クレムソン大学の研究者らは、何十年にも及ぶ作物データと害虫管理データをデジタル化したり、収穫量の向上や日常的な農業慣行の改善につながる農業に関する推奨情報を提供したいと考えていた。IBMは、クレムソン大学が提供するデータを活用し、農作業のレコメンデーションのための「Agricultural Recommendations(AgRec)Prototype API」をオープンソース化して、誰もが自由に利用できるようにしている。
クレムソン大学とCall for Codeのデプロイメントチームは、長年にわたって収集されているデータをデジタル化し、誰もがスマートフォンやコンピューターでデータを検索して、必要な答えを見つけられるようにしようとしている。
IBMのEdrian Irizarry氏とGaurav Ramakrishna氏は、米国時間1月13日のブログ記事で、米国で地方の農家の多くは、作物や害虫管理に関する必要なデータに容易にアクセスできないと説明した。情報を得るには、米農務省のResearch and Cooperative Extension Servicesの事務所に問い合わせるか、直接出向く必要があるという。
クレムソン大学のCooperative Extension Serviceは1914年に設立された。科学的な農業に関する推奨情報のレポジトリーとなっている。AgRecはExtension Serviceのデータを活用する。農業従事者はAg-Recを通じて、自らの作物に関連する情報にアクセスできるようになる。このツールはジオタグを付けることができるため、農業者は市場や気候に関する地元のデータを使い、情報に基づいた意思決定が行える。
クレムソン大学の精密農業エンジニアであるKendall Kirk氏は、AgRecを通じて、Cooperative Extension Serviceの推薦情報のデジタルプレゼンスを確立し、誰もが貢献できる枠組みを構築したいと説明した。
IBMのソフトウェア開発担当マネジャーのBrandy Byrd氏は、農業に関するレコメンデーションのデジタルフレームワークを開発することで、クレムソン大学の農業技術共有エコシステムのコミュニティEcosystem for Agricultural Technology Sharing(EATS)の内部に、IBMをはじめとする、さまざまなテクノロジーに取り組む企業とコラボレーションする機会が生まれると説明した。モバイルアクセシビリティ、地方の接続性、エッジコンピューティング、ビッグデータ分析、サステナビリティー、人工知能(AI)、サプライチェーンの最適化、アプリ開発といったテクノロジーだ。
Byrd氏は、「農業従事者は、Cooperative Extension Serviceの研究者やカウンティエージェントから受け取る情報を頼りにしている」とし、「われわれの共同作業は、こうした情報を農業従事者に届けて収量を向上させ、日々の作業に関するアドバイスを提供する上で役立つはずだ。データのデジタル化とモダナイズにより、農業従事者が特定の場所にいなくても、必要な時に、必要な場所へ、農業に関するレコメンデーションを提供できるようになる。AgRec Prototype APIをオープンソース化することは、AgStackのオープンソースコミュニティーを巻き込む素晴らしい1歩となる」と述べている。
The Linux FoundationのプロジェクトAgStack Foundationは、データインフラの管理とホスティングを行い、この取り組みに協力する。AgStack Foundationは、世界の農業エコシステム向けのオープンソースのデジタルインフラプロジェクトで、The Linux Foundationが2021年5月に立ち上げた。オープンソースコミュニティーが、世界の農業の効率を向上させる上で必要な、デジタルデータとアプリケーションインフラを提供している。AgStackは、Githubリポジトリーの1つでコードをホストし、クラウドを通じて、農作業のレコメンデーションエンジンとデータを提供する。
AgRec APIは2022年末までに、正式にリリースされる見通しだ。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。