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自宅を職場と同じ環境と化すコミュニケーションツール--SENTANが開発

田中克己

2022-01-21 07:00

 中小企業のデジタル活用の遅れが新型コロナウイルス感染拡大で表面化している。その端的な例がテレワーク導入だ。理由は、ITスキルの低さと導入費用の高さにあると言われている。在宅でありながら社内にいるように電話や会議、打ち合わせ、文書作成ができる環境を容易に整備できれば、中小企業のテレワークは間違いなく進展する。

 そう信じるのは、デジタル技術を駆使する新興企業のSENTAN。同社は近く、月額3万円程度で利用できる「テレワークの道具箱」と呼ぶコミュニケーションツールの提供を開始する。在宅などの遠隔地から社内のPCやサーバーにつなぎ、メールやチャット、ビデオ会議、電話、ファクスなどを使えるようにするもので、社内の情報通信機器と自宅のPCをつなぐ接続中継器の役割を担う。

 例えば、会社にかかってきた電話を自宅でとったり、会社の電話番号で自宅から取引先に発信したりできる。従業員がオンライン会議やチャットの機能を使ったり、社内PCにある文書ファイルを編集したりできる。

 テレワークの道具箱には、IP電話やチャット、メール、ファクスなどのコミュニケーションツールに加えて、リモートPC接続や仮想施設網(VPN)などのテレワーク機能を備えている。クラウド利用に必要なユーザーの統合管理やクラウドサービスとのデータ連携ツール、ローコード開発環境、データ可視化ツール、データ統合ツール、ファイル転送ソフトもある。さらに、2段階認証やネットワーク監視、セキュリティ監査といったセキュリティ対策も盛り込まれている。メールや電話、チャット、社内PCなどの遠隔操作を管理記録するので、従業員の働き方も把握できるという。

 道具箱を構成するソフトウェアのほとんどが導入実績のあるオープンソースソフトウェア(OSS)になる。同社 代表取締役の松田利夫氏は「ユーザー数によるライセンス料をゼロにするため」と、OSSを使った理由を説明する。最終決定はしていないが、接続中継器をPCにすれば、従業員10人規模のテレワークが可能になり、利用料金は月額3万円程度。接続中継器をサーバーにすれば、100人規模まで可能になり、利用料金は月額5万円程度とする計画。100人以上の利用を想定するなら、月額10万円程度のクラウド版になる。この利用料には、初期導入費や2、3カ月に1回の割合で実施するバージョンアップ費も含まれている。現行の基幹システムに手を入れる必要もないので、社内のPCに道具箱を導入するのは6時間程度で完了するという。ユーザーはPCなどのテレワークに必要な機器を自ら調達するだけだ。

 道具箱は、中小企業のデジタル活用を阻む課題を解消することにもなる。システム構築や運用・保守、派遣などから利益を得ることを生業にするIT企業は、ユーザーに「全てお任せください」といったビジネスを展開したいので、工数のかからないユーザーは極端にいえば相手にしたくない。

 だから、IT知識や資金の乏しい中小企業は課題解決にデジタルを生かせないことになる。そんなことが10年も20年も続いている中で、SENTANは在宅勤務を可能にするオフィス環境を仮想アプライアンス化し、定額料金で使えるようにした。IT企業の伝統的なビジネスモデルを否定する取り組みともいえる。その一方、高齢者や主婦などをオンライン雇用し、在宅でのデータ入力作業を委託するなど、人手不足の解消や新しいビジネスの取り組みも可能にする。

 SENTANは現在、テレワークの道具箱をユーザー企業などに試験導入し、十数万円のPCなら遠隔地から何人が接続し、快適な環境に利用できるかなどの検証を始めた。実証実験の結果から、本格的な販売に乗り出す予定だ。

田中 克己
IT産業ジャーナリスト
日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任、2010年1月からフリーのITジャーナリスト。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。12年10月からITビジネス研究会代表幹事も務める。35年にわたりIT産業の動向をウォッチし、主な著書は「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路」(日経BP社)、「ニッポンのIT企業」(ITmedia、電子書籍)、「2020年 ITがひろげる未来の可能性」(日経BPコンサルティング、監修)。

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