日立製作所(日立)は、列車やバスなどの公共交通事業者向けに、乗客の流れを予測・シミュレーションして混雑情報の分析結果を提供する「人流予測情報提供サービス」を開発し、提供開始した。利用価格は個別見積もり。
同サービスは、今回の販売開始に先立ち、東京地下鉄(東京メトロ)が運行する全9路線の全ての駅区間、全171駅に関する時間帯ごとの列車や駅改札口の混雑状況の可視化に用いられている。可視化された情報は、東京メトロが提供するモバイル向け「東京メトロmy!アプリ」や東京メトロの公式ホームページで配信されている。
同サービスは日立で分析環境を構築し、専用システムによる導入コストが不要となる。分析の頻度や期間に応じて、柔軟に提供可能な月額利用のサービスとして開始し、編成/駅間ごとの乗員人数や利用者の移動時間の分析結果をCSV形式の帳票や、情報配信サービス向けの画像形式で提供する。
同サービスの人工知能(AI)・シミュレーション技術は、移動需要を出発地と到着地の組み合わせの単位で予測し、時刻表データを基に列車に割り当てるため、駅を通過する利用者の目的地別の割合や乗客の移動時間や列車待ち時間といった情報を出力することもできる。
これにより、混雑を回避しながら安心して公共交通機関を利用できる移動経路や列車の選択が可能になるなど、利用者向けサービスの向上を支援する。交通事業者向けには、現行の時刻表データと改変予定の時刻表データに対してシミュレーションを行い、輸送計画の評価検討のほか、事故発生時などの乗客誘導の検討を支援する。過去データを基にAIで算出した将来の移動需要に、突発的な需要の増減要素を加味することで、イベント日における需給バランスを事前に評価することも可能だ。
さらに同サービスでは、発着場所別の集計データや時刻表データといった各データの加工・分析で必要となる前処理について、交通事業者が保有するデータの性質や分析対象エリアの特徴に合わせ、適切なデータの処理方法を提案する。例えば、出発地から到着地まで複数の経路が存在するため、利用者数の把握が難しい場合には、あらかじめ複数の経路候補を用意し、配分処理やチューニング作業を実施することで、より精度の高い情報を出力できる。
複数事業者が乗り入れ、利用者数を正確に把握できないエリアについては、国や自治体の交通量調査や昼夜間の人口統計などのオープンデータや通信キャリアが提供する位置情報の統計データといった外部データを活用し、データを補完して分析精度の向上を図るなど、分析の前工程で重要となるコンサルティングを行う。
今後は、ポイント管理システムなどから得られる会員情報や購買データなど外部システムのデータと組み合わせ、沿線住民向けサービスの向上や需要に基づく都市開発といった新たなサービス創出を支援していく。