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メタバースの今と未来

第2回:メタバースで広がる経済圏--日本企業の飛躍にも期待

柴原誉幸 (スペースラボ)

2022-02-17 07:00

 現在、最も熱い分野の一つとも言える「メタバース」。前回は、メタバースの在り方が時代とともに変遷してきたこと、そして今注目されているのは「ウェブ3.0」を基盤とした「メタバース3.0」であることを解説しました。

 世界中で注目されるメタバースですが、筆者は「日本企業こそメタバースで成長できる」と考えています。その理由も含め、今回はビジネスの視点から、メタバースの特徴や魅力を解説してみたいと思います。

人が集まると、経済が生まれる

 実は、メタバースは既に私たちの身近で展開されています。例えば、任天堂の「あつまれ どうぶつの森」も、広く捉えればメタバースの一つです。また、ボイスチャットをしながら楽しむオンラインゲームも、メタバースに近いものだといえます。

 既にメタバースは存在していたのに、なぜ最近ここまで注目度が高まっているのか。それは、技術の進歩とともに、メタバースが現実世界とかなり近いものとなり、それに伴ってメタバースの世界が一つの大きな商空間になりつつあるからです。例えば、Manticore Gamesが提供する「Core」やThe Sandboxの「The Sandbox」のようなプラットフォームは、新しい経済圏として世界的に注目されています。

 先述の通り、メタバースは「不特定多数の人が共存する空間」です。たくさんの人が集まり、自由にコミュニケーションをとるようになれば、そこには自然と物やサービスのやりとりが生まれます。

 人が集まり、経済が生まれる場所は、当然ビジネスの可能性を孕んだ場所でもあります。このような理由で、昨今多くの企業がメタバースに注目しているのです。

同じ好みや思想を持つ人が集まる場所

 ビジネス的な意味で重要なのは、メタバースが「単に人がたくさん集まる場所」ではなく、「趣味や考え方の似た人々がたくさん集まる場所」であることです。この意味でメタバースは、近年ビジネスの場として当たり前に活用されるようになったSNSとも似ています。

 メタバースにおいて、世界がたった一つである必要はどこにもありません。さまざまな好み・思想に応じて複数の仮想世界が生まれてくるでしょう。これが、「現実世界」という一つの世界でのみ展開されるSNSとは異なるメタバースの魅力です。

 このように複数の世界が存在する環境は、企業にとっても嬉しいはずです。たとえ小さな企業でも、自社の強みにぴったりの世界に出店することで、本当に自社の価値を分かってくれる顧客にアプローチできる可能性が高まるからです。

日本企業こそ、メタバースで飛躍できる

 世界中で注目されているメタバースですが、実は日本企業こそ、メタバースと抜群に相性が良いのではないかと私は考えています。というのも、現在日本企業が抱える課題が、メタバースによって解決される可能性が高いのです。

日本企業を悩ませてきた「商圏の狭さ」

 もともと日本は、商圏が非常に狭いという特徴を持っています。島国であるという地理的要因に加えて、言語の面でも壁があります。日本語話者は、世界においては極めて少数派なのです。

 国や自治体も成長戦略として企業の海外進出を重要視し、さまざまな施策を打ってはいるものの、地理と言語の壁は高く、海外進出を果たしている日本企業は2019年時点で25%未満にとどまっています。

 日本企業の多くが国内市場だけをフィールドにしのぎを削る現在の状況には、致命的な問題があります。狭い日本国内では、海外企業のように「グローバルに新規市場を広げる」という手段が取れません。従って、今ある国内の顧客層を飽きさせない工夫が必要になり、結果として「短いスパンで新製品を作り続ける」という方法で顧客を維持するしかなくなります。

 もちろん新しい製品の開発には大きなコストがかかるのですが、何も作らずにいると他社に顧客を奪われてしまうので、無駄だと分かっていても短期間で開発し続けるしかない――日本企業は、こうしたいわゆる「イノベーションのジレンマ」に陥ってきたのです。

メタバースがビジネスの障壁を取り払う

 この状況を打破してくれそうなのが、メタバースです。地理的な条件に関係なく、オンラインで商圏が世界へと広がるという現在の電子商取引(EC)サイトの利点に加えて、メタバースでは、オンライン上でさまざまな人々と偶然に出会えるような節点を持つことができ、リアルタイムで翻訳された音声、言語、リアクションでコミュニケーションがとれるようになるのです。

 それは現実社会に近い体験をもたらします。例えば海外旅行で、現地の言葉が話せなくても同時翻訳を介して現地の人とコミュニケーションを取りながら買い物ができるような体験がオンライン上で実現するわけです。つまり、日本企業が市場を拡大する上での2大障壁であった「地理の壁」と「言語の壁」が一気に取り払われ、商品の価格だけでなく、日本企業が生み出すものづくりの品質の高さも伝えながら、リアルタイムで商談を進めることを可能にするのです。

 また、メタバースでは現実の物も取り扱われますが、デジタルな商品もたくさん取り扱われます。後者を取り扱えば、商品を国外に輸送するというプロセスも必要ありません。輸送コストがなくなれば、市場を広げるハードルはさらに低くなるでしょう。

 「日本国内/国外」という区別すら無効化するメタバースは、これまで市場の狭さによって停滞してきた国内企業の成長を一気に促進し、日本経済の未来を支えてくれるはずです。

 今回はビジネスの観点から、メタバースの発展が持つ意義を確認しました。次回は、私たち一人ひとりの生活をメタバースがどう変えていくのか、事例も交えて解説します。

柴原誉幸
スペースラボ 代表取締役CEO
1978年三重県生まれ。大学の建築学科在学中にコンピューターグラフィックス(CG)と出会う。展示会デザイン事務所に勤務しながら、映像制作会社で映像ディレクターとして活躍しノンリニア編集などの技術を習得する。その後、建築設計、インテリアデザインの経験を積み、2009年にスペースラボを設立。建築CGパース制作などの建築ビジュアライゼーション事業に始まり、現在は、デジタル広告やインダストリアルCG制作など、広くCGとテクノロジーを融合したデジタルイノベーション事業に携わる。2020年バーチャル展示会サービス「バーチャル展示会360」をローンチ。企業や大規模展示会向けバーチャルサービスの実績を多く持ち、さまざまな分野におけるメタバース領域に手を伸ばしている。

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