IBMは金融サービスのTD Securitiesと共同で、「IBM Watson Assistant」を搭載した人工知能(AI)ベースの新しいバーチャルアシスタントを実現している。TD Securitiesの貴金属事業の顧客から寄せられる重要な質問に答えるために役立てられる。
IBMが開発したのは、TD Securitiesが運営するデジタルストア「TD Precious Metals」向けのバーチャルエージェントシステムだ。TD Precious Metalsでは、金、銀、プラチナのバーやコインをオンラインで購入できる。
IBMによると、この新しいバーチャルアシスタントは現在、TD Precious Metalsデジタルストアの機能として利用可能になっている。ユーザーがバーチャルアシスタントに質問を入力し、文章による回答とともに、さらなるガイドやFAQへのリンクを受け取る。「価格はどうやって決まるのか?」「商品の発送方法は?」「購入時に商品数/ドル換算額の上限または下限はあるのか?」といった頻繁に尋ねられる質問に対応できる。
IBMカナダの金融サービスセクター担当リーダーDaniel Cascone氏は、「AIを利用し、タスクを自動化することで、カスタマーリレーションシップを大きく効率化し、強化することができる」とし、「TD Securitiesと協働し、IBM Watsonを搭載するAIバーチャルアシスタントを利用した対話型AIなどの革新的なテクノロジーの力で、全体的な顧客体験を充実させようとしている」と述べている。
TD SecuritiesのマネージングディレクターJames Wolanski氏は、顧客がより優れたデジタル体験を求めているとしながらも、「さらなるサポートや人間的な対応を求めているかもしれない」顧客は今後も「TD Precious Metals Support Desk」を利用できると述べた。
TD Securitiesは店舗にこのサービスを組み入れる前に、IBMのコマースやシステム統合のコンサルタントと共同でシステムを開発した。
IBMの「2021 Global AI Adoption Index」(世界のAI導入状況2021)によると、調査対象となった企業の80%は今後12カ月で何らかの形の自動化ソフトウェアを展開する計画だという。
Watson AssistanをはじめとするIBM Watsonポートフォリオのプロダクトマネジメント担当責任者Brian Loveys氏は米ZDNetの取材に対し、IBM Watson Assistant搭載システムを開発するまで、非常に多くの顧客から「苦痛の連鎖」を体験しているとの声があったと語った。
顧客は現在、質問の答えを得る手段となる選択肢が非常に多く、FAQページや検索、チャットボット、業者との電話などの間でたらい回しにされていると感じることが多いという。
Loveys氏は次のように述べている。「そういったことで顧客の満足度やロイヤルティが損なわれる。これに対処するため、企業がさまざまな顧客サポートのオプションすべてを整理し、顧客が行き詰まることがなく、簡単にたどれるような単一の論理的な経路にまとめることができるよう支援している。すばらしいカスタマーケアエクスペリエンスは、自動化されたセルフサービス式サポートのオプションで始まり、顧客がどのようなチャネルを利用していても、最初の問い合わせで質問を解決できるようにするとともに、特に複雑な問い合わせには、人の顧客サービス担当者にシームレスに引き継いで対応するべきだ」
「また、特別な顧客体験を生み出す方法を企業に伝えるガイドブックやマップは存在しない。これまで、バーチャルアシスタントの開発に関して、企業は試行錯誤を数多く繰り返さなければならず、エンドユーザーに不利益をもたらすこともあった。われわれは、企業ができるだけ簡単に素早く魅力的な顧客体験を開発できるよう、長年にわたって企業と協力し、Watson Assistantに向けたAI研究開発の強力なパイプラインを実現した。その中には、話題の変化への対処や、代替オプションの提案、曖昧な要求への適応、スペルミスや誤解への対処、人間の担当者が必要なタイミングの検知といった、人間の言語のニュアンスや無秩序さに対応できるAIもある。こうした機能はすべて、細かい設定なしですぐに利用可能だ」(Loveys氏)
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。