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パナソニックはものづくりの自律化を実現する--CNSの樋口社長が示す展望

大河原克行

2022-02-17 06:00

 パナソニック コネクティッドソリューションズ(CNS)社の樋口泰行社長がメディアインタビューに応じ、2021年9月に買収を完了したBlue Yonderが、早くも想定以上の成果を上げていることを強調した。また、新たに「オートノマスファクトリー」のコンセプトを打ち出し、Blue Yonderとともに展開する「オートノマスサプライチェーン」の実現に向けて大きな一歩を踏み出した。パナソニックは、4月に持ち株会社制移行し、CNS社は「パナソニックコネクト株式会社」に商号を変更、より独立性を高めた経営を進めることになる。樋口氏に現在の取り組みやパナソニックコネクトの方向性などについて聞いた。

パナソニック 代表取締役 専務執行役員 コネクティッドソリューションズ社 社長の樋口泰行氏
パナソニック 代表取締役 専務執行役員 コネクティッドソリューションズ社 社長の樋口泰行氏

 パナソニックは、2022年4月の持ち株会社制への移行に先立ち、2021年10月1日にカンパニー制を事実上廃止して新たな事業体制に移行している。パナソニックの楠見雄規社長兼グループCEO(最高経営責任者)は、「一般的には持ち株会社制と呼ぶが、私は事業会社制と呼ぶ。新体制の主役は事業会社」と語っており、事業会社ごとの独立性を高め、それぞれが競争力強化の指標を明確化し、課題への対応と成長戦略を推進する。CNS社は、2022年4月からプロセスオートメーション、モバイルソリューション、メディアエンターテインメント、アビオニクス(航空機の電子機器)などの事業を担当する。

 樋口氏は、「持ち株会社制になることで、パナソニックの枠組みで不可能だったことが可能になり、それが増え、より変革を加速できると考えている」と意気込む。そして、「パナソニックコネクト設立により、“大リーグボール養成ギプス”を脱ぐ時期が来た。しっかりと筋肉がついている状態にあり、むしろ、これからが本番」と、樋口氏らしいユニークな例えで現状を説明した。ちなみに大リーグボール養成ギプスは、野球漫画「巨人の星」の主人公である星飛雄馬が幼少期に装着し、それによって鍛えた肉体で「消える魔球」などを生み出した。

 樋口氏は、新卒でパナソニック(当時は松下電器産業)に入社し、2017年4月に「出戻って」から5年を経過しようとしている。この間にカンパニーの本社を東京に移転したほか、役員室廃止やフリーアドレスの採用、ドレスコードの廃止、ITを活用したコミュニケーションの徹底などカルチャー変革に率先して取り組み、これが、今のパナソニック全体の「普通」になってきている。また、現場プロセスイノベーションを軸とした構造改革や営業利益率10%以上を狙う事業の構築にも取り組んできた。

 「3年ぐらいでできると思っていたことが少し時間を要している。だが、この間にやっていいこと、やってはいけないことをさまざまに経験した」と樋口氏。「4月以降は、コロナ禍が収まり経済が活発化してくるだろう。アビオニクス事業が回復基調に入り、Blue Yonderにも勢いがつき、撤退事業の赤字分が減っている。この3つのレバーで今後3年間は大きく伸ばせる手応えがある」と自信を見せる。4月には、新会社のローンチに合わせたキャンペーンも実施する考えも明かす。

 パナソニックコネクトで重要な役割を果たすのがBlue Yonderになる。既に先行する形で、パナソニックコネクトのロゴを公開しているが、新たなロゴの「CONNECT」の文字部分には、Blue Yonderのコーポレートカラーをそのまま採用。「両社が一体的に協業を進めていくこと、One Teamになるというコミットメントを表している」と樋口氏は語り、このことからもパナソニックコネクトの経営においてBlue Yonderの存在が大きいことが分かる。

 Blue Yonderは、世界最大のサプライチェーン(供給網)ソフトウェア会社で、76カ国に3000社以上の顧客基盤を持つ。将来に向けて、自律化したサプライチェーンである「オートノマスサプライチェーン」の実現を目指している。Blue Yonderの現状を樋口氏は、「想定以上に好調」と語る。

 先ごろパナソニックが初開示したBlue Yonderの業績は、第3四半期(2021年10~12月)の売上高が前年同期比12%増の2億9300万ドルとなり、四半期ごとに右肩上がりで成長を維持。さらに、売上高に占めるリカーリング比率は第3四半期には69.1%だった。また、Software as a Service(SaaS)ビジネスについては、年間経常収益(Annual Recurring Revenue:ARR)が第3四半期実績で4億7500万ドルとなり、これも四半期を追うごとに右肩上がりで拡大、売上継続率(Net Revenue Retention:NRR)は108%で、5四半期連続で100%を超える成長を遂げている。

 「リカーリング率の高さ、ARRの規模、解約率の低さ、リニューアル商談時のセルアップの実績などの主要な指標で想定以上の実績を上げている。方向性も文化も明確で、強いオペレーションを行っている」(樋口氏)とし、「期初で7割の売上高が確定しており、しかも、受注残が10億ドル以上ある。健全な経営状況でこの実績は買収前の目論見以上。2022年度以降もそれに沿った計画を立てていきたい」と強気の姿勢を見せる。実際、2022年度以降はリカーリング比率をさらに高める方針を既に明らかにしている。

 また、日本でもBlue Yonderが持つ開発ツールを活用し、同じ環境でのソフトウェア開発をスタートさせたほか、クラウドベースのビジネスモデルの適用なども積極的に進めていく考えだ。「Blue Yonderから学ぶところは多く、米国で生まれたクラウドベースのソフトウェアモデルをパナソニックの中にうまい形で融合させていきたい。Blue Yonderは、パナソニックコネクトが取り組んでいく『現場プロセスイノベーション』のコア中のコアになる」と樋口氏は位置付ける。

 なお、2月28日付でBlue YonderのGilish Rishi氏が最高経営責任者(CEO)を退職し、3月1日付で暫定CEOにワールドワイドコマーシャルビジネス エグゼクティブバイスプレジデントのMark Morgan氏が就任する。「お客さまにしっかり説明し混乱はない。今回の人事は暫定CEOで、社内外を問わずに最適な人材をCEOに選びたい。今のBlue Yonderの企業価値を考えれば優秀な人材を採用できるはずだ」と自信を見せる。

 さらに、樋口氏自らも2月16日付でBlue Yonder ジャパンの代表取締役会長に兼務で就任し、日本市場におけるBlue Yonderのソリューション展開をさらに加速する。日本法人の会長職は新設されたもので、CNS社からも5人のマネジメントのエキスパートが出向、国内でのビジネス基盤を強化する。また、2月14日には、Blue Yonder ジャパンのオフィスを、CNS社の本社がある東京・汐留の浜離宮ビルに移転した。CNS社と一体的にビジネスを推進できる体制も整え、日本における協業が一気に進むことになりそうだ。

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