「また、金融商品として設計したため、顧客が閲覧できる商品開示説明書もある。これは規制対象の商品であり、オーストラリア証券投資委員会(ASIC)の監督下にあるので、当行のアプローチは市場の他のいくつかの提案と大きく異なる。これが規制対象の機関に期待されていることだと思う」
だが、仮想通貨市場に参入している従来型の大手企業はCBAだけではない。Visaが2021年12月に発表した「Global Crypto Advisory Practice」は、Visa Consulting and Analytics(VCA)部門の新サービスであり、仮想通貨の投資や採用のあらゆる側面について顧客にアドバイスするものだ。
「このアセットクラスはすでに定着しており、今後も長きにわたって存在し続けると考えている」。Visaでオーストラリアとニュージーランドのイノベーションおよびパートナーシップ責任者を務めるAnthony Jones氏は米ZDNetにこう語った。
VisaもCBAと同様に、顧客の仮想通貨に対する関心がこの12カ月間で高まったと感じている。Visaが全世界を対象に実施した調査「The Crypto Phenomenon: Consumer Attitudes and Usage」によると、オーストラリア人の約3人に1人が投資手段または交換媒体として仮想通貨を直接扱ったことがあるという。
「大幅な増加がみられる。利用はこの12カ月間で約50%増だ。消費者の間で非常に大きな増加があった。従来のクライアントも関心を強めているし、新しいデジタルパートナークライアントの間でもデジタル通貨とデジタル資産への関心が高まっている」(Jones氏)
仮想通貨は大きく伸びているものの、Jones氏もGilder氏も、慎重すぎるくらい慎重になることが重要だと警告した。
「必ずしも仮想通貨の購入を薦めているわけではない。その観点から自分で調べてもらう必要があるが、重要なのは仮想通貨と暗号資産の可能性を理解することだ」とJones氏は述べた。
Gilder氏は、仮想通貨の正当性が高まっているとはいえ、依然として値動きが激しい資産であるため潜在的なリスクが伴う、と指摘する。
「仮想通貨を買うお金を持っている人にとっては存在価値があると思うが、多くの点を警戒しなければならない。当行の製品内には取引アプリもあり、過度な売買をしないように促している」(Gilder氏)
オーストラリアの金融市場で仮想通貨が資産として定着しつつあることを示すさらなる兆候は、オーストラリア政府が2022年に仮想通貨関連の改革を実施すると発表したことだ。予想される改革には、デジタル通貨取引所(DCE)に対して、オーストラリアの投資家の資産を国内で保有するよう義務づけることなどがある。また、DCEへのライセンス発行の枠組みについても2022年前半に協議を開始する予定で、ライセンスを取得したDCEは、規制環境下で消費者が暗号資産を売買するサービスを提供できるようになる。
税務局が調査を開始
一方、オーストラリア税務局は、デジタル取引とデジタル資産への課税の政策的枠組みについて助言するため、調査を開始する。
今回の動きの前には、オーストラリア取引報告分析センター(Australian Transaction Reports and Analysis Centre:AUSTRAC)が2017年後半に、マネーロンダリング防止とテロ資金供与防止に関する規制を仮想通貨取引所に拡大することを承認されていた。
これにより、デジタル通貨取引所サービスプロバイダーは金融セクターの他の企業と同じ義務を適用し、マネーロンダリングやテロ資金供与などの重大犯罪のリスクを特定、管理、軽減することが求められている。また、不審な事柄をAUSTRACに報告する義務も負う。
「AUSTRACと、われわれのパートナーである法執行機関は、金融セクターの犯罪利用の防止と検知を非常に重視している。たとえばマネーロンダリングの新たな手法を標的としており、これには仮想通貨も含まれる。こうした取り組みの一環として、犯罪活動を発見して阻止する企業との提携や新技術の導入を進めている」。AUSTRACの広報担当者はこのように述べた。
「AUSTRACは、国内外のパートナーに専門的なインテリジェンスを提供するべく、仮想通貨に関する能力の向上に引き続き投資していく」
CBAのGilder氏は、これらの新しい規制によってオーストラリアの仮想通貨をめぐる状況がさらに形成されると確信しており、できれば良い方向に変わってほしいと考えている。
「規制が(世界的に)大きく変わるだろう。分散型金融(DeFi)分野のイノベーションは続いていき、うまくいくものといかないものがあるだろうが、その過程を見守るのは興味深い。まさに創造性のるつぼだ」とGilder氏。
「この仮想通貨のメインストリーム化は今後も進み、より多くの人々が市場に参入すると思う。これは組織レベルと個人レベルの両方で起きており、成長しているのが分かる」
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。