5Gの展開には数年を要しており、大手モバイルキャリアは今も自社の5Gネットワークを展開しているところだ。しかし、5Gを手がける企業は、2022年が5Gにとって大きな転機となり、その約束の一部がついに果たされると期待を寄せている。本記事では、この新たなモバイルテクノロジーが大きな影響を及ぼすと考えられる分野をいくつか紹介する。
5Gと自動車運転
すでに多くの自動車が、後退時車両検知警告(Rear Cross-Traffic Alerts:RCTA)、衝突警告、自動緊急ブレーキなどの安全機能を搭載しているが、5G接続によってこれらの機能がさらに強化されるだろう。
本田技研工業(ホンダ)とVerizonは2021年、ホンダの「SAFE SWARM」プロジェクトで描かれたような将来の自動車で5Gを利用する計画を発表した。このイニシアチブは、自動車が他の道路利用者や機器(カメラや信号機など)と通信して、位置や速度、自動車センサーデータなどの重要な情報を共有できるようにするというものだ。両社によると、5Gを使用することで、車載の人工知能で処理する必要があるデータを減らせる見込みだという。
5Gを使用するこの種の技術がすべての自動車に搭載されたとしたら、横断歩道の安全性向上に貢献するほか、緊急車両の接近や交差点で信号無視をしている自動車についての運転手への警告機能に役立つだろう。さらに、この研究によって、5G搭載の恩恵を受けられる自動運転車やフリート車両の開発が進むと考えられる。
Porsche、General Motors、トヨタ自動車など、他の自動車メーカーも将来のモデルで5Gに力を入れている。アナリスト企業Gartnerは、5Gサービスに実際に接続する5G対応車両の割合が、2023年には74%に拡大し、2028年には94%に達すると予測している。
5Gと医療
5Gの影響を受ける可能性がある主要な分野は医療だ。
「何らかの技術が医療に与える影響について考えるときは、患者の生活にどのような影響が及ぶかを考える。5Gの観点から見ると、以前から市場に存在していた概念が、5Gによって現実的な方法で可能になる。たとえば、遠隔患者モニタリングのようなものだ」。テクノロジーコンサルティング企業Capgemini Americasのバイスプレジデント兼ライフサイエンス責任者であるSheetal Chawla氏は米ZDNetにこう語った。
Chawla氏によると、5Gの進歩により、医師からのデジタル暗号化された処方(たとえばペースメーカーを調整するものなど)を、患者が自宅を離れることなく受け取れる可能性があるという。5Gをウェアラブルデバイスと組み合わせれば、健康状態のリアルタイムでの監視が可能になるかもしれない。また、5Gは、医師や医療専門家によるリモート診察への道を開いた。たとえば、人里離れた場所に住んでいて、従来の手段では治療に必要な専門知識を利用できない患者を診察できるようになる。
おそらく最も重要なのは、5Gが医療全般のコストに良い影響を及ぼす可能性があることだ、とChawla氏は語る。
「5Gによって医療費の健全な節約が可能になる」とChawla氏。「データを記録して、パーソナライズされた結果を得られるようにすることで、医療費の管理を大幅に改善することができる」