デジタルの影響力でロシアのウクライナ侵攻を阻止できないか。今回の「一言もの申す」は、その強い思いを込めて書きたい。
有力なIT/デジタル企業がこぞってロシアでの事業停止へ
「コンピューターなんてGDP(国内総生産)への影響は小さいよ」
30年ほど前、コンピューター分野を担当していた新聞記者時代に、エネルギー分野を担当していた先輩記者と話していて、こう言われたことがある。まだ、「IT」とも「デジタル」とも表現しなかった頃だが、取材を重ねる中で「この分野は金融と同様に産業全体、さらには社会生活に不可欠なものとなり、世の中を変える影響力を持つ」と思い始めていた時だったので、「世の中に大したインパクトはない」とピシャリ否定されたように感じたことを今でもよく覚えている。
でも、その後の動向は周知の通り。PCやインターネット、スマートフォンなどが登場したこともあり、コンピューターからIT、デジタルと呼ばれるようになって、この分野は「基幹産業」の一つとして世の中に大きな影響力をもたらすようになった。これは日本もロシアも含めてグローバルで同じことが言える。
見立てが当たっていたのもさることながら、影響力が大きくなっただけに「これからはその中身をしっかりと見据え、本当に世の中に役立つ方向にもっていかなければ」というのが、筆者の今の心境である。
前置きが長くなったが、そんな大きな影響力を持つようになったデジタルによって、今、世界中が注目するロシアのウクライナ侵攻を止められないものか。本稿でこの出来事そのものに対する論評を述べるのは差し控えておくが、一言だけ「どんな事情があろうと戦争には絶対に手を染めてはいけない。それこそが人間の英知なのだから」と申し上げておきたい(写真1)。
写真1:地図で見るウクライナと周辺国(筆者所有の地球儀より)
デジタルの影響力で、と思い立ったのは、名だたるIT/デジタル分野のグローバル企業がロシアでの事業を一時的に停止したりと制限する動きを起こしているからだ。例えば、Apple、IBM、Microsoft、Oracle、SAP、PayPal、TikTok、Netflixといった影響力の大きい企業が名を連ねている。さらに、デジタル時代に欠かせないキャッシュレス決済手段という観点からすると、主要なクレジットカード会社がロシアでのサービス利用の停止に動いていることもデジタルの影響力の範囲と捉えていいだろう。ロシアにとっては大きな打撃となるはずだ。