富士通とレッドハットは3月10日、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みを支援するサービスの提供に向けて新たに協業すると発表した。顧客の経営層と事業およびIT部門が連携するDXの実現を支援するとしている。
富士通とレッドハットの協業内容
今回の協業では、富士通のDX人材やアジャイル開発力、社内DXの実践で得た経験、ノウハウと、レッドハットのコンサルティングノウハウを組み合わせ、顧客における経営課題の認識からビジネス戦略の策定までをコンサルティングサービスで支援するほか、顧客でのDX人材を育成するオンライントレーニングおよび仮説検証型ビジネスを支援するサービスを4月から提供していく。
具体的には、富士通が顧客の経営層や事業およびIT部門と経営の現状認識、ビジネス変革を目指すDX構想の立案、グランドデザインの策定までを支援。オンラインワークショップなどを通じてファシリテートするほか、アジャイル開発などを推進していくスクラムマスター人材の育成、アジャイルの各種手法の習得を支援する。
DX支援サービスの概要
富士通側の協業体制
レッドハットは、DX支援をはじめとするコンサルティングサービスやその活動拠点となる「Open Innovation Labs」を活用し、富士通と連携して顧客のDXを伴走型で支援していくとする。また、富士通グループのエンジニアリソースを集約した「ジャパングローバルゲートウェイ(JGG)」が開発や技術面などを担当するという。
同日記者会見した富士通 執行役員常務 グローバルソリューション部門 副部門長の大西俊介氏は、「企業を取り巻く経営環境の変化が激しく将来予測が困難な時代になり、企業には、DXを通じて変化に強い組織となることが求められている」と述べた。
また、変化にはアジャイル(柔軟性)やスピードが必要とされ、社内だけでなく社外の知見も取り入ることも重要とする。今回の協業は、こうした要素を踏まえ富士通が取り組むDXプロジェクト(通称「フジトラ」)の成果や経験を新規事業として展開する狙いがある。
レッドハット 副社長執行役員 パートナーエコシステム事業本部長の金古毅氏は、今回の取り組みが、「2003年に富士通と協業を開始して以降、20年に及ぶ実績の成果」とし、同社が掲げる「オープンハイブリッド戦略」を推進する上で、富士通との新たな関係が重要になると説明した。Open Innovation LabsによるDXの支援は、コンサルティングサービスが主体だが、今回の協業でJGGの開発リソースを活用できるようになり、「新たな協業モデルを展開することをうれしく思う」と期待感をあらわにした。
レッドハット側の中核となるOpen Innovation Labsの特徴
JGGを統括する富士通 理事 ジャパン・グローバルゲートウェイ本部長の浦元克浩氏は、2022年度から7000人体制で活動を本格化させるとし、「国内外の開発力を生かし、徹底した標準化によるサービス提供品質の均一化などを強みに顧客のDXを支援するデリバリー面を担う」などと説明した。
また大西氏は、「国内市場では、金融機関などの大規模な基幹システム刷新案件がほぼ終了しており、『2025年の崖』問題に伴う各種企業での基幹システムの刷新も山場を迎える」と現状にも触れた。同社は、2021年10月にさまざまな社会課題などの解決や持続型社会の実現などをコンセプトとするブランド「Fujitsu Uvance」を発表しており、「今後は『Uvance』のようなビジネスが中心になる。DXの実現を推進していく顧客の需要が高まり、今回のような新しい体制でのパートナーエコシステムで応えたい」と語った。
富士通は、今回の協業に関する事業目標として、2022年度からの3年間で2000億円規模を見込んでいる。
(左から)協業を発表した富士通の理事 ジャパン・グローバルゲートウェイ本部長の浦元克浩氏、執行役員常務 グローバルソリューション部門 副部門長の大西俊介氏、レッドハット 副社長執行役員 パートナーエコシステム事業本部長の金古毅氏