セキュリティベンダーのチェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズは3月17日、メディア向け説明会を開催し、代表取締役社長に就任した青葉雅和氏らが新体制での事業方針や製品戦略などを発表した。青葉氏は、“老舗セキュリティベンダー”といった同社に対する顧客のイメージを変えていきたいと表明した。
チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ 代表取締役社長の青葉雅和氏
青葉氏は、日本IBMの出身でシスコシステムズやシトリックス・システムズ・ジャパン、ブロケードコミュニケーションズシステムズで要職を歴任、直近ではCloudflare日本法人代表を務めており、ネットワークおよびセキュリティ製品のビジネスで豊富な経験を持つ。
説明会の冒頭で青葉氏は、自身のキャリアを踏まえて「リモートワークの普及など企業ではネットワークとセキュリティの重要性がますます高まり、従来の企業内部に侵入する脅威への対策のみならず、クラウドを中心とした包括的なセキュリティ対策が求められる」と述べた。チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズについて、「ファイアウォール(FW)を普及させたセキュリティベンダーの老舗とのイメージが根強くある。実は、FW以外に多様なセキュリティ製品を開発・提供しているが、あまり浸透していない」とした。
近年は企業のITシステム環境がクラウド化しつつあり、セキュリティ対策では企業の内部ネットワークとインターネットの境界を基準にする「境界防御」モデルから、ITシステムにアクセスするユーザーなどを基準として、常に安全性を確認しながら脅威に対応していく「ゼロトラスト」モデルへの移行が提唱されている。
新たな企業ロゴとスローガン
青葉氏は、同社がゼロトラストモデル時代に対応したセキュリティベンダーとして体制を新たにしていると説明。企業ロゴを刷新し、「最高のセキュリティを常に身近に」というスローガンを新たに掲げるなどの取り組みを進めるほか、製品・サービスのポートフォリオもゼロトラストを具現化していくものに発展させていると強調した。
ただ、日本市場では課題があるとする。「これまで製品や技術へ重点的に投資していたため、製品やサービスはとても優れているが、営業やサポートが手薄だった。まず人員を拡充して営業とサポートを強化し、顧客にきめ細かく対応しながら関係を深めていきたい。2022年は、クラウドを中心とする統合的なセキュリティソリューションや人工知能(AI)を活用した運用の自動化、ゼロトラストセキュリティの推進などに取り組む」などと表明した。
2022年中に営業体制の人員規模を現行の1.5倍とするほか、パートナーとのビジネス規模を今後3年間で2倍するなどの目標を掲げている。
同社の現在の主な製品・サービスは、クラウドセキュリティの「CloudGuard」、リモートアクセスの「Harmony」、セキュリティアプライアンスの「Quantum」シリーズなどになる。これらの動向をサイバーセキュリティオフィサーの卯城大士氏が説明した。
主力製品やサービス
CloudGuardは、2018年の提供から脅威対策やワークロード保護、アプリケーション保護、設定管理などの機能を段階的に強化し、直近ではプログラムコードのセキュリティ対策と、Amazon Web Services(AWS)に対応した次世代FWなどの機能を提供する。
Harmonyでは、エージェント型とエージェントレス型でVPN接続機能などを提供するほか、直近では脅威侵入の初期手口に使われるフィッシングメールを高精度に検知、遮断する「Harmony Email & Collaboration」を加えた。
Quantumシリーズは、データセンター向けを中心としたスループットが250~800Gbpsの製品ラインアップをそろえる。NVIDIAの「Quantum Lightspeed ASIC」を実装して3マイクロ秒の超低遅延処理を実現するほか、「ハイパースケール構成によりスループットを最高3Tbpsにまで拡張できるとする。直近ではSD-WAN機能の強化やIoTデバイスの保護機能を追加している。
チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ サイバーセキュリティオフィサーの卯城大士氏
卯城氏は、国内外でセキュリティインシデントが多発する状況から、セキュリティ対策の強化をもとよりセキュリティ意識の向上も重要だと述べる。新型コロナウイルス感染症対策での感染を抑止するマスクの着用や感染の際の隔離といった取り組みを例に挙げ、「衛生を保つことで感染症に備えるように、平時からサイバーセキュリティの衛生状態を保つことが大切になる」などとアドバイスした。