エフセキュアは3月17日、法人市場(BtoB)向け新ブランドとして「WithSecure」を発表した。従来の「F-Secure」を個人市場(BtoC)向けブランドと位置づけ、さらに両部門を分社化するとした。日本法人は同日付でウィズセキュアに社名が変更されており、今後改めてエフセキュアが新会社として設立される予定。
フィンランド本社も2022年6月末にWithSecureに名称変更した上で、新会社としてF-Secureを設立する計画だ。現経営陣の誰がどちらに所属するか、従業員を両社にどのように振り分けるかといった詳細はまだ確定していないとのことだが、両社は今後予定されている新オフィスの開設に当たっても同じ建物に入居する予定だといい、密接な協力関係が維持されるものと思われる。
F-SecureはBtoC事業のイメージが強いとする一方で、BtoB事業の売り上げが年々右肩上がりで成長。2018年以降はBtoB事業がBtoC事業を上回っているという。そこで同社は「BtoCとBtoBの両方を本格的に成長させるため、それぞれが独立したブランドを持つべき」との考えから、今回の新ブランドの発表と分社化という方針に至ったという。
F-Secure アジアパシフィック地域担当バイスプレジデントで、日本法人のBtoB部門責任者でもあるJohn Duley氏は同社の強みについて「テクノロジーと現実世界の専門知識のユニークなコンビネーションを持っている」と紹介。今回の新ブランドの発表に関しては、「人の認知を変えることはとても難しい」と指摘した上で、「市場ではF-Secureはどちらかといえばウイルス対策製品で知られているが、現在のビジネスはウイルス対策だけではない」ことから、「『ウイルス対策のF-Secure』という認知を過去のものとし、新しい認知を得ることが重要」だと語った。
F-Secure アジアパシフィック地域担当バイスプレジデントのJohn Duley氏
また、WithSecureというブランド名は「お客さまとビジネスパートナーの皆さまとの『グッドパートナーシップ』を表している」(Duley氏)と説明。さらに、「デジタル社会における信頼の構築を支援する」というパーパス(Purpose)と、「サイバー攻撃によって誰も深刻な被害を受けない未来を作る」というビジョン(Vision)を表明した。WithSecureブランドでは「パートナーシップの価値である『コ・セキュリティ(Co-security)』」というコンセプトも強く打ち出していくという。
F-Secureの創業者で会長のRisto Siilasmaa氏はビデオメッセージで「個人と企業という2つのオーディエンスには、それぞれ全く異なるニーズを理解し、それに応える2つの異なるブランドを持つ2つの会社が最適なサービスを提供すべきだと確信している」と分社の背景を説明。さらにコ・セキュリティに関しては「過去30年以上の間に私たちが学んだことは、『誰も、単独で、全てのサイバーセキュリティの問題を解決することはできない』ということ」だと語った。
最後に同氏は、分社後の展望として「私たちにとって、今こそ2つの市場に絶対的なフォーカスを当てるべきだ。BtoCとBtoBはどちらも大きな市場であり、私たちが大きなプレゼンスを発揮できる分野になる。コンパクトで機敏な2つの会社が、お客さまとパートナーに良いサービスを提供し、競争力を高め、新しいビジネスチャンスに迅速に対応していく」と語った。
F-Secureの創業者で会長のRisto Siilasmaa氏