山谷剛史の「中国ビジネス四方山話」

死後のデータをどう扱うべきか--中国のネットユーザーがデジタル遺産で論議 - (page 2)

山谷剛史

2022-03-24 07:00

 ウェイボーは2020年9月に「『故人アカウント』の保護に関する留意事項」を発表。これは、故人のアカウントを確認後、ログインや投稿、削除、ステータス変更をできないようにし、そのままの状態でアカウントを保存するものだ。これに先立つ2019年4月、ウェイボーは中国国家博物館と提携し、全てのコンテンツをデジタルメモリーとデジタル遺産として保存対象にすると発表している。

 動画サイトの哔哩哔哩(ビリビリ)は2020年12月、「メモリアルアカウント」機能を開始した。これも、家族や親族が申請して故人のアカウントを残すというものだ。サービスの発表文では「かつて彼らと私たちが同じ世界に存在し、同じ風景を見て、同じことに喜んだり悲しんだりしたことを記念するため」と説明している。

 ビリビリのアカウント「墨茶Official」の運営者が2021年1月に若くして死んだ。同氏はビリビリで合計28本の動画を投稿しており、生前はフォロワーが200人程度の目立たないアカウントだった。ところが死後、メモリアルアカウントのフォロワーは199万1000人に達し、最も再生された動画は800万回以上に及ぶ。

 同氏は生前、家族のために借金を積み重ね、家を出て四川省成都市で低賃金で働いた末、衛生状態が良くない食事で体調不良に陥ったと判明。日々の労働とライブ配信だけの貧しい生活という、他人事ではない地方出身者の悲痛な人生経験に、多くの中国人が共感した。それに加え、「一部の人だけが死後に名誉を受け記憶される特権を持つのではなく、平凡な私でも必ず愛される」という希望を視聴者に与えていると中国メディアは分析している。

 人の死のプロセスは3段階に分けられ、1つ目は脳死などの身体的な死、2つ目は葬式などによる社会的な死、3つ目は世界の誰もがその人のことを忘れる、それが完全な死であるという意見がある。故人のデータを残すか消すかはまだ各企業による手探りの段階だが、やがて中国政府はそれに対しても方針を示していくかもしれない。

山谷剛史(やまや・たけし)
フリーランスライター
2002年から中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、ASEANのITや消費トレンドをIT系メディア、経済系メディア、トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に『日本人が知らない中国ネットトレンド2014』『新しい中国人 ネットで団結する若者たち』など。

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