「LegalForce」で新旧対照表の作成を4時間から10分に--導入企業オーエスに聞く

阿久津良和 河部恭紀 (編集部)

2022-04-18 07:40

 総合AI(AV×IoE)システム企業オーエスは2022年1月、人工知能(AI)契約審査プラットフォーム「LegalForce」とAI契約管理システム「LegalForceキャビネ」を導入したと発表した。契約書の更新時に新旧部分を比較する一覧表の作成に4時間かかっていたが、「LegalForce」の利用で作業時間を10分にまで短縮することを実現。契約書の審査においては、効率化だけでなく、システム上にナレッジを蓄積することで自社の知見継承や営業部門の育成といった幅広い展開を目指している。

 オーエスは創業から約70年の歴史があり、スクリーンやプロジェクターの開発から販売、映像や音響機器を組み合わせた空間デザインなどを手掛ける。その事業活動に欠かせないのが契約業務だ。同社が扱う製品やソリューションは多岐にわたり、膨大かつ多様な領域の契約業務が発生するため、重要な契約以外のチェックは後回しになっていた。

 確認すべき契約書が毎月増える一方で対応が間に合わずたまってしまい、「まるで借金が積み重なっているような状態」だったと経営戦略部 知財法務課 主幹の前田和則氏は振り返る。ここでも多くの企業で課題となってきた人的資源不足と、紙ベースの業務における現場負担が発生していた。

 契約審査・作成は、誤字脱字のチェックにとどまらず、契約を結ぶ企業の力関係を把握しながらレビューし、抜け漏れなくリスクを確認する必要がある。契約は一度締結すると簡単には修正できず、場合によっては事業リスクにもつながる。実は法務担当者の負担が非常に大きい業務でもある。

 前田氏によると、LegalForce導入は効率化だけでなく、従業員の高齢化に伴う「10年後を見据えた判断」だという。法務の知見を継承させるため、経営戦略部 知財法務課 課長の伊藤良造氏から紹介されたと説明する。法務畑を長年歩み続けた伊藤氏は、2019年のオーエス入社以前からLegalForceの存在を把握していたという。

LegalForce
LegalForce

 一般的な契約業務は、事業部が取引先と契約を交わすところから始まる。事業部から法務部へ契約書の作成や、取引先から送られてきた契約書の審査が依頼される。この工程は"契約書レビュー"とも呼ばれるが、「一件当たり数時間かかるものも少なくない」(伊藤氏)。LegalForceは契約書レビューをAIに担わせることで業務時間の短縮や、属人化からの脱却を図るソリューションである。契約書の種類によっては「5〜10分で契約書レビューが完了するのは魅力的」だと伊藤氏は強調する。

 同氏によれば「(紙時代の)昔は新旧対照表に、ひな形をコピーしながら切り貼りしていた。それなりに(法務担当者の)勉強になる」が、LegalForceを使うことで一連の業務が「一瞬にしてアウトプットされる」ため、業務時間を短縮できたと説明する。同時に比較結果を「Microsoft Excel」形式で出力する「新旧対照表も便利だ」と評した。

比較機能
比較機能

 選定に至ったもう一つの理由がLegalForce 代表取締役社長角田望氏の人柄である。「2021年6月ごろにお目にかかったが、顧客の話をよく聞いてくれる姿勢に惹かれ、信頼できる企業だと感じた」と伊藤氏。「要望を伝えれば、すぐに開発に反映しようとしてくれる。その姿勢も大きな決め手」(同氏)になったという。

 LegalForceを導入したオーエスは、社内の利点も大きかったと振り返る。「契約書の審査・作成時に見落としやミスがあると、出し戻しの回数が増え、担当者の時間を無駄にしてしまうし、社内での知財法務課の信用も失いかねない。だが、LegalForceで作成した新旧対照表作成を基にレビューすれば、先方と交渉もでき、時間短縮にもつながる」と前田氏は述べる。

 「契約書は可視化が重要」だと伊藤氏。契約書レビュー時に契約リスクの指摘だけでなく、なぜリスクになり得るのかという背景も合わせて可視化することで、営業担当の契約に対する理解度向上につながる。法務部門に限らず、社内への波及も大きかったという。

 もう一つの評価点が「LegalForceひな形(契約書のテンプレート)」である。過去の契約書を基にした自社のひな形や、LegalForceが作成した600点以上のひな形が時短となることは説明するまでもない。現在も法改正に伴う更新などを含め、月に10点程度が改訂されている。

 今後の利用について、伊藤氏は、「さまざまなリスクを考慮した上で、そのリスクを回避できるよう契約内に条項を追加するなど、事前のリスク対策のためにLegalForceを活用するのが理想的」と機能の向上をうながしつつ、事業部から依頼される契約書の作成・審査の受付を一元化する「案件管理機能」の全社展開により、案件のやりとり履歴といった情報を蓄積して部署間で共有することを展望の一つに数えた。

 「紙ベースの契約書類をさかのぼって確認するのは非現実的。LegalForceの活用を通じて、営業担当者のスキルアップや、企業としての売り上げ向上につながるのでは」と前田氏は述べた。

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