「Docker Desktop」は、「Windows」や「Mac」にインストールして、簡単にDockerコンテナーなどの開発環境を構築できる便利なツールだ。Docker Desktopには、「Docker Engine」、「Docker CLI」クライアント、「Docker Compose」、「Docker Content Trust」、「Kubernetes」、「Credential Helper」が含まれている。これを使えば、コンテナー化されたアプリケーションやマイクロサービスのビルドや共有が簡単に行える。ただし、これまでは1つ問題があった。それは、「Linux」デスクトップ版が存在しなかったということだ。
WindowsのゲームやMacの写真編集ソフトであればLinux版がないのは理解できるが、Docker DesktopにLinux版がないのは筋が通らない。なにしろ、本番環境のLinux上でDockerやコンテナーは動いている。しかしようやく、多くのDocker開発者の要望を受けて、DockerはLinuxデスクトップ用Docker Desktopの提供を開始することになった。
Dockerコンテナーがビルドしやすくなるだけでなく、「Docker Desktop for Linux」のダッシュボードを使えば、コンテナーやイメージ、ボリュームを管理するのも容易になる。また、ほかにも次のようなメリットがある。
- すべての主要なOSでDockerの使い勝手が同じになる。
- Kubernetesとのシームレスな統合。
- Docker Desktop UIによって、自分のマシン上でローカルに実行されているDockerプロセスの情報が得られる。
それに加えて、Mac版やWindows版のDocker Desktopと同じように、Linux版でも「Docker Extensions」が利用できるため、補完的な開発ツールをいろいろと追加することができる。Dockerは、リリース時点の拡張機能提供パートナーを14社発表しており、この中には、JFrogやRed Hat、Snyk、VMwareなどが含まれている。
Dockerの最高経営責任者(CEO)Scott Johnston氏は、Docker DesktopやDocker Extensionsを発表した理由を、「クラウドネイティブなツールの市場が大規模で複雑になっており、適切な仕事のために適切なツールを今すぐ必要とする開発者にとって、難題になっている」からだと説明した。「Docker Extensionsを使えば、開発者が自分のアプリに必要なツールをすぐに見つけて使い始めることができるため、ツールを検索し、ダウンロードし、設定し、評価し、管理するために時間を無駄にせずに済む」という。
例えば、「JFrog Xray」のDocker Desktop拡張機能を使えば、自動的にDockerコンテナーをスキャンして、脆弱性やコンプライアンス違反の有無をプロセスの早い段階から確認することができる。JFrogのデベロッパーリレーションズ担当バイスプレジデントを務めるStephen Chin氏は、声明の中で、「Dockerとのパートナーシップと機能統合を、脆弱性スキャニング、フォレンジックス、コンプライアンス機能などを提供するJFrog Xrayにも拡大できるようになった」と述べている。「ソフトウェアサプライチェーン攻撃が増加していることから、開発者が早い段階からエクスポージャーに関して多くの情報を得られるようにすることで、適切なタイミングで対応や修正を行ってダウンタイムを短縮したり、最終顧客からの信用喪失を回避するために、必要なチームと連携が取れるようにしたい」
JFrogのDocker Desktop拡張機能を組み込むと、以下のようなことが可能になる。
- Dockerコンテナーにカプセル化されたソフトウェアのセキュリティの監視と監査を行う
- Dockerコンテナー内の脆弱なアーティファクトを、デプロイ前および運用開始後に特定する
- ソフトウェアのセキュリティインシデントの全容を把握するための強力なフォレンジック調査を実施する
- JFrog PlatformとDocker Desktopアプリケーションを素早く簡単に接続し、実行できる
Dockerは、 同社の技術を使用している開発チームは、従来の13倍の頻度でリリースできるようになり、新しい技術による生産性向上までにかかる時間が65%短縮され、セキュリティ上の脆弱性の平均解決時間(MTTR)62%が圧縮されると主張している。
Linux版Docker Desktopを使ってみたければ、Dockerのドキュメントを参照して、自分のディストリビューション向けの説明を見つけてほしい。Dockerはdebとrpmのパッケージを提供しているが、現段階での具体的なサポート対象は「Ubuntu」「Debian」「Fedora」となっている。また、「ArchLinux」用の実験的なパッケージも存在しており、64ビットの「Raspberry Pi OS」版も間もなく公開される予定だ。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。