Twilio Japanは5月19日、ソフトバンクと提携し、山間部などを除いた国内全域の固定電話番号(0AB-J番号)で利用可能な音声通話サービスの提供を開始した。Twilio Japanは以前から050番号のIP電話サービスと、「0120」「0800」のトールフリーサービスを提供してきたが、市場需要の高まりに応じて、ソフトバンクの電話網を用いた固定電話番号サービスを開始する。
Twilio Japan 代表執行役員 社長 今野芳弘氏
Twilio Japan 代表執行役員 社長 今野芳弘氏は「需要の高い金融や小売り、公共系企業」に焦点を当てつつ、既存サービスと組み合わせたマルチチャネル化を通じて、1年以内の新規売り上げをIP電話サービスの2倍以上を目指す。
電話を近代化
人と人を音声でつなぐ電話市場は技術革新なども相まって、今後拡大する可能性は乏しい。音声を中心とした人間同士のコミュニケーションが「DX(デジタルトランスフォーメーション)化に対応するため、アプリケーションやAI(人工知能)と人間をつないで音声でサポートするケースが増えている」(今野氏)と、変化しつつあると指し示しながら、今回のサービスを「一言で述べれば『電話の近代化』」(今野氏)だと主張した。
一般的に企業が電話基盤を構築するにはオンプレミスもしくはクラウドの電話交換機(PBX)の導入や保守、設置工事など大きなコストが発生し、自社が利用する既存アプリケーションとの連携も容易ではない。こうした背景から今回のサービス提供に踏み切ったと説明する。
固定電話番号にこだわる理由として今野氏は「固定番号需要が非常に高い。地域性の反映や(電話番号に対する)安心感、企業の看板番号を継続利用できる」からだと述べた。
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具体的にはTwilioのサービス基盤をソフトバンクのシステムと接続し、提供可能な電話番号に「03」「06」など全国の市外局番から始まる電話の通話が可能。Twilio APIと連携させることで、ユーザー企業が稼働させているアプリケーションと連携できる。「Twilio Customer Engagement Platform(CEP)」を構成する各アプリケーションやサービスとも連携できる。
チャットやショートメッセージ(SMS)などチャネルごとに異なるAPIで自社サービス連携を図っていた企業の場合、Twilio APIに集約できるため、開発負担や運用コストの軽減も見込める可能性が高いという。
今回のサービスでは、マルチメディアデータを端末間でリアルタイムに双方向通信するための通信開始プロトコルである「SIP」のトランキングに対応した「Twilio Elastic SIP Trunking」を提供しており、企業が構築した既存のIP-PBXと連携させれば、安価な運用も期待できるとしている。
ソフトバンク 執行役員 法人事業統括付 ソリューション・クラウドエンジニアリング/ICTオペレーション担当 野田真氏
パートナーであるソフトバンク 執行役員 法人事業統括付 ソリューション・クラウドエンジニアリング/ICTオペレーション担当 野田真氏は、電気自動車の進化になぞらえつつ、「同じことがコミュニケーションサービスでも起きている。CPaaS(Communications Platform as a Service)に固定電話番号が加わり、オフライン(の電話)とオンライン(CPaaS)が融合すれば、アプリケーションの一機能として利便性が格段に向上する」コメントした。
その一例として、TwilioとLINE AIを組み込んだ顧客情報管理システム(CRM)から直接顧客に通話発信し、録音した通話内容を音声認識で商談記録を自動作成すれば、「業務効率化とオペレーションミスの軽減が容易に想像できる」(野田氏)と事例を紹介した。
サービス基盤となるCEPについて、今野氏は「エンゲージメントアプリケーションは充実した。次世代CEPは(顧客データを活用した)パーソナライズとデータ連携に注力」し、今後日本での展開を目指すと解説した。
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