AIモデルで地中の埋設物を高精度に探査--富士通らが開発

大場みのり (編集部)

2022-05-23 16:46

 戸田建設と富士通、建設コンサルティング会社のきんそくは、地中埋設管の破損事故を未然に防ぐための埋設探査において、人工知能(AI)モデルを用いて埋設管を効率的に検出する埋設探査システムのプロトタイプシステムを開発した。2021年6~11月にかけて試験運用で有効性を確認し、2022年4月から実用化に向けてシステムの構築を進めている。

 日本建設業連合会などの調査によると、建設現場では工事前における埋設管位置の確認不足や図面・台帳の施工記録の不整合などにより、年間150件近くの埋設管損傷事故が発生しているという。これらの損傷事故を未然に防ぐために埋設管の事前調査が行われており、代表的な調査方法の一つに地中レーダー探査装置による計測方法がある。この方法では地中に照射したレーダー反射の変化で現れる双曲線の波形画像から埋設管位置を推定するが、現地計測で取得した数多くの波形画像データから目視で埋設管を判定する専門技術者の不足と作業負荷、判定に対する客観性の担保などが課題だという。

 今回開発したプロトタイプシステムでは、断面図に現れる双曲線の波形を富士通のAI技術で解析し、その連続状態から平面だけでなく深度方向も含めて埋設管の位置を推定する。埋設管位置の推定に対する信頼度を存在確率として0~100%の範囲で利用者に示すことができ、2D/3Dモデルでの出力も可能だ。

埋設探査システムによる解析フロー 埋設探査システムによる解析フロー
※クリックすると拡大画像が見られます

 今回のシステムでは、専門技術者の目視判定結果と同程度の精度で検出できるという。数多くのデータに対する目視での見落としの可能性を考慮すると、AIによる検出結果の信頼性向上が期待される。実験フィールドで検証した結果、同システムでの再現率は80%以上であり、局所的には専門技術者の解析結果を上回る制度が確認された。波形画像の解析にまつわる所要時間は、専門技術者が目視判定する場合と比較して75%以上短縮される。波形パターンの違いもAIで解析し、金属/非金属の判別と管内の水の有無を判別する。

 3社は今後、2022年10月の同システム運用開始を目指し、さまざまな工事現場に展開して埋設管の損傷事故防止に役立てるとともに、システムのさらなる精度向上を図る。また、同システムを通して得た知見を建設業界やインフラ事業にまつわる業界に展開する。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. クラウドコンピューティング

    生成 AI の真価を引き出すアプリケーション戦略--ユースケースから導くアプローチ

  2. セキュリティ

    セキュリティ担当者に贈る、従業員のリテラシーが測れる「情報セキュリティ理解度チェックテスト」

  3. セキュリティ

    マンガで解説、「WAF」活用が脆弱性への応急処置に効果的である理由とは?

  4. セキュリティ

    クラウドネイティブ開発の要”API”--調査に見る「懸念されるリスク」と「セキュリティ対応策」

  5. セキュリティ

    5分で学ぶCIEMの基礎--なぜ今CIEM(クラウドインフラストラクチャ権限管理)が必要なのか?

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]