DXと業務プロセス自動化の本質

表面的な業務自動化ではなく、本質的な自動化に必要なこと

ジェイ ヤマモト (Blue Prism)

2022-06-09 06:00

 国内でロボティックプロセスオートメーション(RPA)が本格的に普及し始めてから、約5年が経とうとしている。当初は「自動化」というと、PCを使った個々人の単純作業に要する時間を削減するための道具のように思われていたが、さすがに今ではそういった誤解が薄れて来ているようだ。

 しかしながら、業務の自動化を進めるに当たって、ツールの選定や自動化の方法・手順については踏み込んだ議論がされているものの、単に業務の中にある繰り返し部分を見つけて自動化するという間違った思い込みにより、とりあえずツールを導入して試したものの、当初に期待していた成果を出せないままプロジェクトがとん挫する悩みや、むしろ整備や運用にコストが増えてしまったなどの失敗談が後を絶たない。

 本来の「自動化」とは、人を煩わしい反復作業から解放し、より人でないとできない作業に注力するためのものだった。それが、かえって自動化の維持や保守のために、人と時間とカネが掛かるような「残念な状態」になってしまうのは、なぜだろうか。この連載を通じて、読者と彼らの所属する組織が本来の自動化によってもたらされるメリットを享受し、真のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する上で、どのように考え、どのように推進すれば良いかという心構えを体得していただきたい。そのためのしっかりとした基礎を作り、応用に展開していける方向性を示せればと考えている。

 まずは、今までの紙と人手によって運営されていた業務をどのような観点からデジタル化していくべきか、そして、そのデジタル化された業務にまつわるデータをどのように活用していくべきかについて掘り下げる。

歴史的に紙とハンコで業務が行われていた理由

 1980年代までの日本の組織は、ほぼ全ての業務が紙とハンコ、そして人の手によってなされていた。この段階ではほぼ全てといえる情報が手書きか印刷された紙によって配布され、紙に書かれた情報以外は口頭もしくは電話などでなされた会話を誰かが文字起こしして紙に書きとめる必要があった。

 つまり、この時代まで情報を記録するということは、紙の上に残すことであり、コピー機が普及するまでは、紙の上に書かれた情報を写真に撮る以外に人が手書きで写さないといけないものだった。このような「原本」の上に印鑑や手書きで署名するということは、物理的にその紙を見て触ることができるという前提で出来上がった「システム」と言える。このシステムは紙の発明以降ずっと変わることなく、今でもほぼ誰もが認識できるシステムとも言える。

 このシステムとその前提は、1980年代後半にPCが普及し始め、組織内の業務にも導入され出すまでは盤石だったが、1990年代に入り、業務に本格的にPCが使われ始めたことと、プリンターが普及したことによって、崩れ始める。

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