パナソニック コネクトは6月1日、機関投資家および証券アナリストを対象にした「Panasonic Group IR Day 2022」を開催し、同社の中長期的な事業戦略について説明した。ソフトウェアベースの「成長事業」と、ハードウェアベースの「コア事業」の2軸に分けた事業体制を打ち出し、中期の経営指標として、2024年度に売上高1兆1700億円、成長事業でのリカーリング比率50%、EBITDA1500億円、EBITDA率は13%を掲げている。
パナソニック 代表取締役 執行役員 社長兼CEOの樋口泰行氏
代表取締役 執行役員 社長兼CEO(最高経営責任者)の樋口泰行氏は、「赤字事業が終息し利益を底上げしつつあるのに加え、アビオニクスの回復、Blue Yonderの成長が、EBITDA率13%達成に向けた成長レバーになる。これにコア事業のオーガニックな成長が加わり、まず2024年度にEBITDA1500億円の達成で、さらなるエクセレントカンパニーを目指す礎を作りたい」と述べた。
また、今回の説明では、通常投資に加えて今後3年間で1500億円の強化投資を追加することを新たに発表。コア事業で500億円、成長事業で1000億円を投資する。成長事業の投資の多くは合併・買収(M&A)を想定し、Blue Yonderではマイクロサービスの開発を強化、SCMネットワーク、eコマース、ラストマイル領域のボルトオン投資などを想定している。
さらに、新たな考え方として、成長事業が持つクラウドプラットフォーム、アジャイル開発をコア事業でも活用し、人材交流やノウハウの共有も行うとする。ハードウェアを研ぎ澄ませていくというコア事業でも、クラウド型のSaaSビジネスの機会があるとし、ハードウェア事業に付加する形でBlue Yonderから学んだビジネスモデルを組み込むなどとした。
なお、パナソニック コネクトが新たに制定した「Our Purpose」を映像化した動画を4月からYouTubeで配信し、これまで1600万回の再生があったという。
成長戦略の構図
成長事業は、「Blue Yonder」「Blue Yonderとパナソニックのシナジー」「現場ソリューションカンパニー」の3つで構成する。先頃発表したサプライチェーンマネジメント(SCM)事業を統合、株式上場も計画し、成長事業領域における取り組みとする。
樋口氏は、「SCMソフトウェア市場は変化や進化が速く、タイムリーに正しい意思決定をすれば大きく成長できる。オンプレミス比率が8割の市場でクラウド移行の余地が大きく、シェア競争に勝てばいい位置を得られる。経営の自主独立性とスピード感、パナソニックグループとしての相乗効果を実現する形で上場を検討していく」とした。
Blue Yonderの2022年1~3月業績も報告した。売上高は前年比11%増の2億8900万ドル、SaaS売上比率は39%、SaaS ARR(Annual Recurring Revenue)は36%増の5億500万ドル、SaaSバックオーダーは44%増の11億6800万ドルだった。「買収時目論見以上の結果になった。リカーリング比率をドライブすることができる強いモメンタムを維持している」と述べた。
また、Blue Yonderを中核としたSCM事業の成長戦略では「SaaSビジネスの成長」「現場データ連携によるSaaS高付加価値化」「ホワイトスペースの日本市場攻略」の3点を挙げ、SaaS市場のシェア確保に向けて研究開発の強化やM&A投資により、Blue Yonderの強みをより伸ばし、欧米でのSaaSビジネスを着実に成長させていく必要があるとした。また、パナソニックが得意とする業務現場のデータとBlue YonderのSaaSを連携させ、付加価値の向上を図ることも必要とする。「パナソニックのセンシングなどの技術、得意とする現場最適化ソリューション、Blue Yonderの組み合わせで、リアルタイムなフィードバックループを構築し、効率的なSCMを実現できる。SCMソフトウェアだけで戦う競合に対し、顧客の囲い込みやつなぎ止めという点で大きな強みを発揮できる」などとした。
サプライチェーン領域での施策
さらに、現場ソリューションカンパニーではBlue Yonderの活用で顧客の経営基盤に入り込んだ商談を増やせるとするほか、製造、物流、小売に限らない幅広いサプライチェーン領域に関与できる機会も期待する。「パナソニックの顧客基盤、人材、インフラ、ブランドを総動員して日本のBlue Yonderのビジネスを推進しており、日本の案件が着実に増加している。日本IBMとアクセンチュアとの連携もうまく立ち上がり、むしろリソースが足りない状況」などと述べた。