IDC Japanは6月13日、国内ITインフラストラクチャー(インフラ)サービス市場の予測を発表した。2021年は前年比2.7%増の1兆7575億円となり、2021~2026年の年平均成長率(CAGR)を3.2%、2026年の市場規模を2兆524億円と予測する。
同社は、同市場を「設計/構築」「運用/保守」の各領域に分ける。「設計/構築」の領域では、2021年の市場規模は前年比3.7%増の3569億円だった。新型コロナウイルス感染症の世界流行による悪影響は解消に向かう一方、リモートワーク対応やデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組み加速などが市場に好影響を与えた。2022年以降もこれらの需要は継続し、全体として堅調な成長を維持すると、IDCでは見ている。2021~2026年のCAGRは2.5%。
「運用/保守」について、2021年の市場規模は前年比2.5%増の1兆4007億円だった。同じく新型コロナの感染拡大による悪影響は解消に向かい、クラウドやVirtual Desktop Infrastructure(VDI)、Desktop as a Service(DaaS)などへの需要も継続した。「ますます複雑化するITインフラ環境の包括的なアウトソーシングへの需要も高い状態が続いた」(IDC)としている。2022年以降は、DX推進に伴うITインフラ関連のさまざまなニーズが拡大し、予測期間を通じて成長率は上昇傾向を示すと見ている。2021~2026年のCAGRは3.3%と予測する。
産業分野別での分析では、運輸サービスや旅行業、宿泊業、店舗型の小売業を中心とした流通業、サプライチェーンの乱れが発生した製造業などで、新型コロナの悪影響から回復が遅れている。それ以外の産業分野では、投資が縮小した2020年の反動増や、DXへの取り組み加速などが寄与し、2021年は堅調な成長を示した。2022年以降も新型コロナの感染状況に左右される可能性は残るものの、IT投資はおおむね正常化に向かい、予測期間にわたっていずれの産業分野もプラス成長で推移すると、IDCは見ている。
国内ITインフラサービス市場では、今後もDX推進に伴う需要が継続すると見られる。その一方で、中堅中小企業(SMB)を中心に、新型コロナ感染拡大やロシア・ウクライナ戦争による悪影響が長期化する可能性がある。また、運用保守人材の不足傾向も強まっているという。
ITサービスのシニアマーケットアナリストである吉井誠一郎氏は、「ITインフラサービスを提供する国内サービスベンダーは、アプリケーション領域と一体化したアプローチを強化するとともに、SMB向けのリモートワーク導入も推進すべきである。さらに、マネージドサービスの自動化や部品化を推進すべきである」と話す。
国内ITインフラサービス市場 支出額予測:2021~2026年