通信基盤を支え、西日本から世界に事業展開--NTT西の森林新社長

國谷武史 (編集部)

2022-06-30 06:30

 NTT西日本 代表取締役社長 社長執行役員の森林正彰氏が6月29日、大阪市内で社長就任に伴う記者会見を行った。西日本地域からグローバル市場に多数の新規事業を展開することにより、ビジネスの持続的な成長を実現させたいと表明した。

経営方針を発表したNTT西日本新社長の森林正彰氏
経営方針を発表したNTT西日本新社長の森林正彰氏

 森林氏は北海道出身の60歳で、1984年に旧電電公社に入社。初配属は愛知県津島市の局舎、1991~93年に北九州支店設備部で設備計画を担当して以降、長らくNTTコミュニティーズの米国、アジア、欧州の事業やクラウドサービス事業の要職を歴任し、直近ではNTTグループの海外事業を手掛けるNTT Limitedのプレジデントを務めた。NTT地域会社のトップとしては異色の経歴で、森林氏の起用は2025年開催の大阪万博を見据えた方針と見られる。

 冒頭で森林氏は、社名にある「電信電話(でんしんでんわ)」から考案したという「伝新人輪(でんしんじんわ)」という4文字を披露し、自身の経営方針を説明した。「伝」は、日本の通信インフラを支え続ける「伝統」、「新」は新しいことへの挑戦、「人」は人材を重視する姿勢、「輪」はパートナーシップを表現したという。

 「伝」については、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進で効率化を図りつつも、日本の情報通信インフラを担う企業の使命として、高品質で安定したサービスの維持に注力し続けると述べる。ただし固定通信回線の事業は、光接続を除けば今後も縮小し続ける見通しのため、「新」で表現した新規事業領域の拡大に時間を割いて説明した。

 NTT西日本グループには、国内最大級の電子書籍配信サービス「コミックシーモア」を運営するNTTソルマーレや、パラマントベッドとの合弁で設立した睡眠管理による健康増進サービスを手掛けるNTT PARAVITAなどがあり、「特に英国滞在時代は日本のコミック人気の高さを直接見ており、世界的な需要がある。日本で成功したものは積極的に海外展開させていく。2022年中に何かしらの新しい取り組みを開始できる」(森林氏)とした。

 大阪万博には同社も出展を計画。ここでは、NTTグループとして次世代通信基盤「IOWN」をグローバル市場に本格訴求するだけなく、実際の案件獲得を狙っていくとのこと。また、喫緊の施策ではローカル5G(自営型5Gシステム)を使った法人向けソリューションビジネスも推進していくという。

新規事業領域では、デジタルサービスから次世代通信技術までグローバル市場に訴求、展開する
新規事業領域では、デジタルサービスから次世代通信技術までグローバル市場に訴求、展開する

 「人」や「輪」は、人材の育成や多様化、パートナーエコシステムなどであり、特に新規事業の成長・拡大を図る上でのキーワードになる。3月に大阪・京橋に開設したビジネス共創施設「QUINTBRIDGE」では、既に300以上のスタートアップと数千人以上の個人を会員として獲得し、新規事業の創出活動が本格化する。この他に、地域DX拠点と位置付ける「LINK SPARK」を4都市で展開し、管内30府県の各支店が地域密着でDXを推進する「地域のビタミン活動」と称する取り組みも進める。さらに教育市場向けには、大学の在校生および卒業生にIDを付与し、大学や企業がさまざまなデジタルサービスを提供できるプラットフォーム事業も推進していく。「現時点で550万IDがあり、潜在的には3000万のIDに対してパートナーに多様なサービスと価値を提供していただくプラットフォームにする」(森林氏)

他方ではNTT地域会社として地域密着型DX支援も推進する
他方ではNTT地域会社として地域密着型DX支援も推進する

 現在のNTT西日本の売上構成は、大きく固定通信事業領域が約3分の2の1兆円弱、新規事業領域が約3分の1の約5000億円。長らく固定通信事業の収入減が続く中では、直近3年で新規事業領域を伸ばし増収増益を達成している。森林氏は、さらに2025年度の新規事業領域の売り上げを半分以上に高めると表明。これにはデータセンターやサイバーセキュリティなどのITサービスも含まれる。

 森林氏は、今回の人事を打診された際に驚いたといい、「方針を聞いて、これまでの(クラウド事業などの)キャリアと海外経験を生かし、さまざまな組織や人々とのつながりを支えるテクノロジーを活用していくことに貢献できると納得した」と明かした。

 グローバルビジネスでは、NTT西日本グループ自身と西日本地域の産業・企業の進出に注力することに加え、パートナーも重視し、「米国シリコンバレーのスタートアップや大手ITベンダーとも積極的に組んでいく」(森林氏)との考えも示した。

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